日本は「困っている人にやさしい社会」になっていない

 行き過ぎた資本主義の反省からか、社会的弱者と共に生きるという考え方は、日本で政権交代が起こったころがピークだったと思います。自民党政権では日本がダメになる。成果主義ばかりに偏っていると社会が壊れてしまう。当時はそうしたムードが高まっていました。

 2008年のリーマン・ショック。暮れから2009年の正月にかけて、派遣切りにあって家も仕事も失った人たちを救済する「派遣村」が立ち上がりました。2009年1月にはアメリカではバラク・オバマが大統領に就任し、覇権主義を放棄して協調主義路線に転換しはじめました。

 日本では民主党政権が樹立し、そこに登場するのが鳩山元首相です。

 2009年9月に民主党に政権が移ると、鳩山首相は所信表明演説を行いました。そのなかにこんなエピソードがありました。

 青森に遊説に出かけたときに、息子さんが自殺したという高齢者の方に手を握られ、私の息子のような人を二度と作らないでほしいと訴えられます。涙ながらに共感した鳩山さんは、すべての人が幸せに暮らせる社会を作ると約束したという話だったと記憶しています。

 この「友愛」「人のため」という鳩山さんの主張に、当時は胸を熱くした人も多かったことと思います。

 果たして、現在はどうでしょうか。

 東日本大震災が起こったことで、いまは「みんなで手を取り合って」「強い人、弱い人も関係なく」というムードになっています。しかし、2年前に起こったムーブメントに対する失望はあまりにも大き過ぎました。震災後に起こっているムードが、社会的弱者に優しい社会を作ることとは、必ずしも強く結びついていないように見えます。