チャンマダンの形成過程などについては、李相哲・龍谷大教授の記事「北朝鮮経済が制裁強化でも容易に破綻しない理由」が詳しい。

 チャンマダンでは、ありとあらゆるモノが、国境を接する中国から密貿易なども含めて輸入され売られた。中国では食料も民生品も金さえあれば手に入る。

 穀物、海産物、果物、お菓子などの食品類だけでなく、化粧品、電化製品、文房具など、品揃えは豊富でなくても、生活必需品はほぼ揃う。時には、軍隊によって横流しされた国連物資なども売られている。

 多種多様な商品のなかには、車の部品であるラジエーターなども見られる。

 人気のある代表的な業種は「古着商売」。すぐ隣の中国は、世界の工場だ。新品、古着にかかわらず、たくさんの商品が入り込んで販売された。同時に、庶民の生活レベルが向上したせいか、最近では中国製品に飽き足らなくなり、日本製や韓国製の方が質がいいという認識さえ広まっている。

 チャンマダンを通じて人々は、市場経済で当たり前の「モノを仕入れて売る」ビジネスを学んだ。

 かつてのヤミ市場は、今では「統合市場」と名付けられ当局公認となった。しかも当局は、市場から「管理費」などの名目で資金を徴収し、国家財政に充てている。

携帯ビジネス急成長
治安当局もブローカーで稼ぐ

 こうした中で、いま急成長するのが、携帯ビジネスだ。

 今年1月の時点で、北朝鮮の携帯ユーザーが370万人を超えたという調査結果がある。 北朝鮮の人口が約2500万人(2015年調べ)だから、14.8%。仮に一世帯4人と計算すると、普及率は60%になる。かなりの世帯が保有しているようだ。

 なによりも、北朝鮮では携帯電話を保有しているかどうかは、ビジネスの信用度にも関わってくる。携帯電話すら持てないヤツに商売なんぞできるわけがないと言ったところだろうか。

 だが、携帯電話の使用は情報の流出入に関わってくるだけに、正規の手続きを経て購入しようとすれば、非常に手間がかかる。

 ここで登場するのがこの制度を利用したビジネス、つまり「携帯ブローカー」だ。

 北朝鮮の携帯電話はプリペイドカード式だ。ブローカーたちは、あらかじめ当局に「賄賂」を渡し、家族名義で複数の携帯電話に加入する。そしてその電話をブローカーに転売するのだ。

 市場でこの「飛ばし携帯」は300ドルという「高値」で売買される人気商品。こうしたことから、治安機関が違法通話などで没収した携帯電話を「飛ばし携帯」として転売して、資金を稼ぐケースもあるほどだ。

 さらに、慢性的な電力不足事情を反映してか、独自開発した充電器まで登場している。中国からバッテリーを輸入する商人が、電気技師を雇って北朝鮮の規格に合わせた充電器を開発してしまったのだ。非正規、すなわち「サードパーティー製」の充電器である。