B社長は、会社の業績を上げることばかり考え続け、労務管理にほとんど向き合ってこなかったことを猛省した。そして心機一転、セクハラ騒動の解決に乗り出した。

A専務は懲戒解雇
となったのか?

 A専務は確かにわが社にとっての大貢献者で先輩であるが、今回は厳しく対処しなければならない。B社長は毅然とした態度でA専務や他の従業員にも聞き取りと事実確認を行い、さらにはA専務の過去の余罪まで調べ上げ調書にまとめた。その後、D社労士から紹介された弁護士に相談し、示談交渉まで依頼した。A専務は今回の件で、会社やB社長に対して多大な迷惑をかけたことを心から反省し、セクハラは二度としないと全社員の前で宣言した。

 B社長の素早い的確な判断と弁護士の尽力により、C子との示談はすんなりまとまった。特にB社長がこれまでの会社の対応について誠心誠意謝罪し、さらには社内でのセクハラ撲滅宣言をしたことが、C子の態度を軟化させたのだ。

 示談成立後、今度は社内秩序の整備に取り掛かった。管理職を対象としたセクハラ対策研修を行い、「社内でのセクハラは絶対に許さない」という会社方針を徹底させた。と同時にセクハラに関する社内相談窓口を設置した。これも「セクハラ撲滅」を考える社長の強い決意の表れであった。

 また、社内の秩序の乱れから規律が緩み、社員が大口クライアントに情報を漏らしたために契約解消という事態を招いた。こうした苦い教訓から、従業員全員の意識を徹底させるため、コンプライアンス研修と守秘義務に関する研修を定期的に行うことにした。さらに社内の秩序を乱さないように、社員が守るべきモラルやマナーについての再確認の必要性を痛感し、社員全員で就業規則等社内規程の読み合わせも行った。

 その後、甲社は社内全体の活気を取り戻し、新たな取引先も増え、会社創立以来の最高の売上高を更新しそうな勢いになった。

 セクハラの悩みは社労士に相談が多い問題の一つだ。A専務のように、程度がひどいと懲戒解雇になりかねないところだが、このケースでは労務管理ができていない会社であったために処分を免れたようだ。一方で本事例と比べてセクハラの程度がひどくなくても、懲戒解雇を会社から言い渡された話も耳にする。セクハラを起こした社員の切り捨てで事を済ませようとしても、根本的な解決にはつながらないだろう。

 もう一つ厄介なのは社員がセクハラの様子について取引先のクライアントに漏らしたために、契約を打ち切られたことである。社内の秩序が乱れて来ると社員のモラルや緊張感がなくなる。そのため、職場上知り得た情報を思わず漏らした典型例といえるのではないか。

 お勤めの会社ではセクハラ対策はできているか、社内の秩序が乱れていないか、今一度確認してほしい。もし、できていないのであれば、社労士や弁護士等と相談しながら対策を講じてもらいたいと思う。

本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。ご了承ください。