2013年卒から就職活動が変わる――。未曾有の就職難を反映して、今企業の新卒採用も転換期を迎えようとしている。
理由として挙げられているのは、大きく2つの要素だ。
1つは、今年3月に日本経団連が発表した「採用選考に関する企業の倫理憲章」の影響である。この憲章に掲げられた「採用選考活動早期開始の自粛」で、企業の広報活動は「卒業・修了学年前年の12月1日以降に開始する」と明記されている。従来の10月スタートから2ヵ月ほど後ろへとずらすことで、「本分である学業に専念する十分な時間を確保する」ことが狙いだ。
もう1つは、厚労省が「卒業後3年以内既卒者の新卒枠での応募受付」を企業側に要請したことである。是非論はともかくとして、これからの新卒採用が新しいルールの下で繰り広げられていくことは、間違いない。
そしてさらに、就活のやり方自体も近年では変化を見せている。TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを活用した「ソーシャル就活」が一般的になってきているのだ。たとえば、Facebook上で「採用」というキーワードで検索をかけてみて欲しい。採用情報に特化した企業のFacebookページが、多数ヒットするはずだ。
そんな「ソーシャル就活」時代を象徴するサービスも、現在では多い。その1つが「Carippo!」(キャリッポ)である。
「Carippo!」は、就活中の学生と「キャリアの先輩」と呼ばれる内定者とが、ソーシャルメディアを活用して“つながる”ことのできるサービスである。つまり、ネット上でのヴァーチャルな関係に終始するのではなく、先輩との出会いを、リアルな関係にまで深めることができるのだ。
「キャリアの先輩」たちが語ってくれるのは、「面接の心得」であったり、「OB訪問の極意」といった、自身の体験談。就活中の学生にとっては、有意義な情報ばかりである。
ただし、そうした「就活ノウハウ」の伝授が「Carippo!」の目的ではないという。
「近年の厳しい就活の状況の中では、内定を取ることが就活の目的となってしまい、本来の命題である『仕事を通じて自分は何がやりたいのか、どういう人間になりたいのか』という点が、ないがしろにされがちです。就活はあくまでキャリアの一歩目。その後にどのようなストーリー展開をイメージするかが、大切なんです」(株式会社トライフ 広報 高木新平氏)
そのために「Carippo!」では、Facebookなどのソーシャルメディアの活用やイベント開催を通じて、「キャリアの先輩」と実際にコンタクトを取る機会を積極的につくっている。
その「キャリアの先輩」たちは、運営者側と面識のある優秀な内定者や社会人。「今後は100名を目標に拡大していく予定」(同氏)だという。先輩たちが困難を乗り越えて就活を終えたという「ストーリー」に、共感を覚える学生は多いのだそうだ。
氷河期とまで呼ばれる分厚い氷を融かすのは、人と人とが生み出す“温もり”なのかもしれない。ソーシャルメディアが生み出す新しい就活のかたちに、期待したい。
(中島 駆/5時から作家塾(R))