この8月から、70歳以上の人の医療費の負担が見直された。
公的年金などの収入が一定額以上ある高齢者は、健康保険の「高額療養費」の自己負担限度額が、段階的に引き上げられることになったのだ。
社会保障の財源は、おもに現役世代の保険料や税、国債(国の借金)によって賄われてきた。高齢者の負担増を求める声はあったものの、政治的な理由もあり、高齢者は所得に関係なく優遇され、70歳になると医療費の負担は引き下げられていた。
しかし、少子化や雇用形態の変化など、高度経済成長期とは社会構造が大きく変化している。画期的な新薬や医療機器の開発、人口の高齢化などによって、医療費は今後も増加していくことが見込まれている。
これまでのように現役世代に多くを頼る負担構造では、社会保障制度の持続可能性が危ぶまれている。そのため、これまで聖域だった高齢者の負担にも手がつけられることになったのだ。
ただし、今回の見直しの元となった「社会保障制度国民会議」の報告書(2013年8月)では、今後は社会保障費の負担を年齢ではなく「負担能力に応じた負担」に転換していくことを示唆している。
同時に「低所得層への配慮」という言葉が繰り返し使われており、今回の見直しで引き上げ対象になるのは年金収入などが一定額以上ある人で、低所得層は据え置かれる。
据え置かれる人はひとまず安心だが、所得の高い人は相応の負担が求められることになる。今後、高齢期の医療費はどう変わるのか。今年8月から始まった70歳以上の人の健康保険の「高額療養費」の見直し内容を確認しておこう。