コミュニティへの帰属意識が高まった顧客は
たしかに購入額も増えていた
たしかに「大変な数字」でした。
それまでも、企業コミュニティに参加している利用者に向けたアンケートなどから、継続的な企業との対話がラポール(相互の信頼関係)を形成することはわかっていました。
企業コミュニティに参加する人々は、さまざまなコミュニケーションを通して、徐々に関与の度合いを強めていきます。落ち着いて自分と向き合える場所を提供してくれる企業に対し、消費者は心を開いてくれるようになります。
また、企業との対話は、消費者に社会との対話を連想させます。その影響力は小さくとも、強烈な社会参加の意識が芽生えていることも知っていました。彼らに宿るものは、「私たちは○○社のコミュニティの住民です」と表明するほどの帰属意識(ロイヤルティ)です。
この通信販売の会社は半年間にわたって、企業コミュニティを運営してきました。あたたかい関係も育ってきました。しかし、顧客の気持ちがあたたかくなるだけでは、企業が本気で取り組める施策にはならない。売上が増えなくてはならない。
半年前に参加した顧客は約3000人。果たして、この顧客の購買総額はいくらほど向上するのか?
3000人の購買データを集計し数字で結果を出す。もし、売上が増えていなければ、企業のマーケティング施策としては失敗です。契約期間の終了と同時にこの企業コミュニティも閉鎖されてしまうことでしょう。
きっと帰属意識の感情は、購入の意思決定にも影響を与えているにちがいない。その試みの結果が、電話の報告の内容でした。
忘年会の会場は歓声に包まれました。「仮説は正しかった……」と、役員のひとりが空のビールジョッキを抱え、小さくガッツポーズをとりました。