アメリカ発のオンライン・ビデオサービス「Hulu」(フールー)が、2011年9月に日本上陸を果たした。
「Hulu」の歴史は案外と古く、2007年にまで遡る。NBCユニバーサルや20世紀フォックスといった大手テレビメディアなどによる合弁会社として設立されたのが、その始まりだ。現在では、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、ディズニー、ワーナー・ブラザースといったハリウッドメジャースタジオとも使用許諾契約を締結しており、多数の人気映画やテレビドラマを配信している。
その「Hulu」が満を持して日本市場に参入してきた。その大きな特徴は2つ。
まず1つ目は、「月額1480円」という非常に安価な定額制を導入したことである。
実はアメリカ本国の「Hulu」のビジネスモデルは、広告が基本である。それゆえにユーザーは無料で視聴することができる。ただし、無料で視聴できる本数には制限があり、それ以上視聴したい場合は、別途「Hulu Plus」という有料サービスに加入するという仕組みになっている。ちなみに、「Hulu Plus」は月額7.99ドルだが、広告は挿入される。日本の定額料金はアメリカよりも高く設定されているが、その代わり広告が表示されない。
もう1つの特徴は、「複数デバイスへの対応」である。これは「Hulu Plus」とも共通する点だが、PCはもちろん、iPadなどのタブレット端末やスマートフォン、あるいはインターネットに接続されたテレビやブルーレイプレーヤー、テレビゲームなどからも視聴できる。
アカウントを1つ取得すれば、手持ちの全てのデバイスで利用可能なので、「自宅で観ていたドラマの続きを外出先で観る」といった使い方ができる。「時と場所」そして「料金」をあまり気にすることなく、気軽に愉しめるという点においては、従来の動画配信サービスと一線を画していると言っていい。
実際にiPadで視聴してみると、その画質の美しさに目を見張る。720ピクセルの高画質ということだが、Wi-Fi接続ではほとんど問題なく視聴することができた(接続環境によって画質は最適化される。また、標準画質のみの動画もある)。タブレット端末との相性は、すこぶる良いという印象だ。
ラインナップに関しては、今のところ賛否両論といったところだろうか。「24-TWENTY FOUR-」「LOST」「デスパレートな妻たち」といった人気ドラマが並んでいるものの、「すでにDVDやケーブルテレビなどで観た」といったユーザーも多いかもしれない(常にブームに乗り遅れてばかりの筆者にとっては、嬉しい限りではある)。映画に関しては、たとえばAppleのiTunesと比較すると、見劣りがするというのが正直なところだ。
また、字幕の表示と精度については不満が残ったが、これに関しては「全ての作品に字幕をご提供させていただくために日々努力しております」とのことである。この点は、日本市場での成功の生命線とも言えるので、早晩改善されることだろう。
「Hulu」は日本参入と同時に、NTTドコモとの独占的マーケティングパートナーシップの締結も発表している。具体的には、NTTによる高速携帯電話サービス「Xi」(クロッシィ)の料金プランを、実質的な定額制へ変更するかたちで現れた。「高速」「大容量」「低遅延」を売りとする「LTE」(Long Term Evolution)サービスにとって、「Hulu」はその実力をアピールできる絶好のパートナーである。
「Hulu」の登場によって、日本の動画配信サービスは、新たな時代に突入したと言えそうだ。
(中島 駆/5時から作家塾(R))