オラクルが、顧客の戦略企画支援を行う専門組織「オラクル・インサイト」を発足してから11年が経つ。現在は「オラクル・クラウド・インサイト」という名称で、人員も増強している。ITベンダーが行う戦略企画支援の意味は何か。同組織を率いるトーマス・シューレ氏に聞いた。
デジタル変革の緊急度は
業種によって異なる
オラクル・クラウド・インサイト バイスプレジデント
欧州、中東、アフリカ、アジアパシフィック+日本統括
KPMGでシニアコンサルタントとして活躍したのち、オラクルが買収したCRMベンダーのSiebelに入社、コンサルタントパートナーを務めたのち買収によってオラクルに入社。2010年より現職。オーストリア・リンツのヨハネス・ケプラー大学にて経営学博士号を取得。現在独ミュンヘン在住
――「オラクル・クラウド・インサイト」とは、どのような組織ですか。
トーマス・シューレ(以下同) 主に大企業の経営企画部に対して、戦略企画を支援します。具体的には、その企業の課題を深堀していき、解決へのアドバイスを行います。
現在、企業はビジネスに用いるテクノロジーの進化を求めており、私たちはその支援を行います。具体的には、事業部門側の戦略とIT部門側の技術、この両者の橋渡しをすることが役割になります。また、私たちの支援サービスは無料であることも特徴です。
オラクル・クラウド・インサイトのメンバーは、トップレベルの経営コンサルティングファームで活動してきた人たちで、例えばマッキンゼー、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)などの出身で、特にITに熱意を持っている人が多く在席しています。
――「デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)」という言葉が流行していますが、企業経営者にとって、他の課題と比べてデジタルへの対応はどれぐらいの優先順位なのでしょうか。
業種や国によって異なると思いますが、大企業にとってデジタル変革は非常に重要となっているのは間違いありません。その程度の違いについて、ビジネススクールでは「ボルテックス(渦)」という言葉で説明していますが、デジタル化という渦の中心に近い、つまり喫緊の課題であるところ、それは金融であり、小売りなどもそうですが、それらの業界では待ったなしの状況にあります。そしてそのやや周辺には、今後デジタル化の渦に引きずり込まれていくことになる製造業などが存在すると言えるでしょう。
――製造業などは、まだ波は穏やかだが、今のうちに漕ぎ出さないと流れが急に加速して渦に飲み込まれるということでしょうか。
そうです。フォーチュン500の企業に、新興企業がどんどん増えている状況なのはご存知の通りで、今後数年でさらに大きく変わることでしょう。かつては、フォーチュン500に企業がとどまっていられる期間は平均して30年程度だったのですが、それがどんどん短くなっています。
ただ、デジタル変革とは、単にWebサイトやモバイルアプリを作るという話ではない、ということが重要です。あるいは、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)だけでもありません。デジタル変革の狙うべきポイントは、「オペレーショナル・エクセレンス」(業務プロセス自体を進化させて競争優位性を持つこと)だと思います。