人間は、脳あってこその存在。人の行動、思考、感情、性格にみられる違いの数々は、すべて脳が決めているのです。「心の個性」それはすなわち「脳の個性」。私たちが日常で何気なく行なっていることはもちろん、「なぜだろう?」と思っている行動の中にも「脳」が大きく絡んでいることがあります。「脳」を知ることは、あなたの中にある「なぜ?」を知ることにもなるのです。この連載では、脳のトリビアともいえる意外な脳の姿を紹介していきます。
朝食を抜くと
脳が「ガス欠」を起こす
朝に弱い人は、目を覚ましてからも、すぐに行動には移れません。しばらくボーっとしてから、朝のシャワーを浴びたりします。
それでいて、現代人は朝食を食べないこともしばしば。朝飯抜きでラッシュの電車にゆられ、ようやく会社や学校に着くのです。
脳は1日あたり400キロカロリーのエネルギーを消費し、そのエネルギー源は血液によって運ばれたブドウ糖です。
その消費量は、1時間あたり5グラムだとされています。ブドウ糖は、グリコーゲンとして肝臓に蓄えられていますが、そのグリコーゲンの量は、60グラムだとされています。つまり、脳が1時間で5グラムを消費するなら、肝臓のグリコーゲンは12時間はもつ勘定になりますね。
「それなら脳の栄養は十分ではないか…」
そんな風な計算をする人がいるかもしれません。ですが、冷静になって考えてみると、たとえば前日の夜7時に食事をすると、翌日の朝7時以降はエネルギー不足に陥ることになります。
つまり、朝7時には朝飯を食べ、エネルギーを補給しなければならない計算になります。
朝飯を摂らないと
成績に差が・・・
では実際のデータではどうでしょうか。
ここで興味深いデータをご紹介したいと思います。大学の寮で暮らす学生を対象に、朝食を摂ったグループと朝食を摂らなかったグループの学業成績を比較する実験が行なわれました。その結果、朝食を食べた学生たちが、食べなかった学生たちよりも成績が良かったといいます。
これは自治医科大学の香川靖雄教授によるデータですが、教授によれば、脳内には精密な生体時計があり、それが人間のリズムを決めているといいます。そして、朝食を食べないでいると、その体内のリズムが外界の明暗にうまく対応しなくなり、昼ごろまで脳が活動をはじめないとのことです。
また、9歳から11歳までの子供を対象にしたデータもあります。それによれば、朝食を食べた子供たちが、そうでない子供たちよりは集中力が高いという結果が出ています。
それほどの厳密なデータではなくても、教育現場では朝食を摂った生徒や学生のほうが成績が良いと、実際に言われてきました。それは、小学校の教師や大学の教授なら、すでに経験的に知っていることです。
脳は膨大なエネルギーを消費する精密なシステムですが、そのためには朝食が欠かせないのです。その朝食がブドウ糖となり、精密な知能システムをフル回転させてくれるのです。