折り紙工学、複雑な立体を1枚で表現する技術の可能性舘 知宏・東京大学大学院総合文化研究科 広域システム科学系助教 Photo by Yoshihisa Wada

 舘知宏が取り組むのは、折り紙の工学的研究である。幾何学やアルゴリズム、そしてひらめきを基にさまざまな建築・構造物への応用の道を探る。

 1枚の紙を折ってさまざまな形を作り上げる──。この日本の伝統文化は今や、「ORIGAMI」として広く世界で知られるようになった。

 産業分野での活用も進む。日本や米国を筆頭に、ロボット、微細電子部品、医療用器具、細胞やDNAへの応用研究など、先端技術として注目を集める。

 そうした産業応用の代表例として知られているのが「ミウラ折り」だ。人工衛星のパネルの折り畳み方として1970年、三浦公亮・東京大学名誉教授によって考案された。折り目に傾斜をつけることで、小さく畳め、ぱっと大きく展開できる。身近なところでは、携帯用の地図などに使われる。

 このミウラ折りは、折り紙の世界では「剛体折り」と呼ばれるカテゴリーに入る。

 剛体とは、三角形や四角形の平面パネルをヒンジでつなげた構造物をイメージすればいい。紙と違い、厚みのあるぶん、設計が厄介になる。建築の領域への応用では、この剛体折りが主役だ。

 舘の研究内容を具体的に紹介しよう。上の写真で手にしているのが、考案した構造物の基本モデルを折り紙で作ったものである。

 左側のピンクの折り紙は、ミウラ折り(紫の折り紙)と同じ構造で作られたものを、上と下で鏡に映したように組み合わせ、一つのチューブ状にしたモデル。滑らかに収縮、展開でき、かつ丈夫だ。