たとえ「風」が吹かなくても
野党陣営は選挙でこれまでより有利に戦える

 現在、希望の党が一挙に過半数を獲得し、政権交代を実現する望みは薄れている。冷静に考えれば、いきなり政権交代など無理であろう。また、たとえ政権交代を実現しても、非自民勢力が安定政権を築くには、高いハードルがある。

 それは、日本の選挙制度の壁である。衆院選の間に、3年おきに半数が改選される参院選を挟む日本の選挙制度下では、衆参両院で安定多数を確保するには、理論的には国政選挙で最低3連勝が必要ということになる。安倍政権が「一強」と呼ばれる強い権力基盤を築いたのは、国政選挙に4連勝したからである(2017.7.18付)。一方、細川・羽田政権や民主党政権の、過去の非自民政権は、衆参両院で安定基盤を築く前に、さまざまな問題に直面し、退陣を余儀なくされた。

 小池代表が、そういう日本政治の歴史を理解していないはずがない。喧嘩師・小池代表であれば、ブームを起こして一挙に政権を奪い取ることだけであれば、簡単なことかもしれない。だが、基本政策の一致しない政治家と組み、素人同然の1回生議員ばかりが右往左往する政権を作っても、百戦錬磨の自民党に狙い撃ちされる。あっけなく崩壊することは目に見えている。

「政策別の野党再編」の後の現実的な方向性は、「自民党内の政権交代」を外から支援することだろう。安倍政権を早期に退陣させて、自民党内でより中道な考え方の新しい首相を誕生させることである。

 今回の総選挙で、自民党が議席を減らすことは確実だといわれている。もちろん、野党が分裂したために、自民党がどれだけ減らすことになるのかは不透明だ。だが、これまで安倍・自民党が4連勝した選挙とは、状況は全く違っている。基本政策別に野党が分かれた。民進党右派が希望の党に移り、安全保障政策で現実的な方向性に変わった。これで、民主党政権崩壊後、失っていた中流層(消極的保守支持層)の票を取り戻せる可能性が出てきた。

 安倍政権の支持率はやや持ち直しているが、安倍首相の「権力の私的濫用」に対する不信感が払拭されたとはいえない。今回の衆院解散の決定のプロセスも、相変わらず野党の反対を強引に押し切り、傲慢な態度は変わっていない。東京都議会議員選挙の「都民ファースト」のように、希望の党が安倍批判票の「受け皿」になれば、かなりの票が流れる可能性がある。

 また、自称リベラル派支持の有権者は、投票に行くモチベーションを非常に高めている。民進党が分裂して、政策的な中途半端さが消えて立憲民主党は「護憲」に収斂されたからである。その上、立憲民主党は、希望の党の公認を得た民進党候補者に対立候補を立てないことを決めている。これらの選挙区では、自称リベラル派支持票は、希望の党に投じられると考えられる。

 たとえ希望の党に「風」が吹かなくても、野党陣営は全体として議席増が見込めるのは間違いない。逆に、現在の自民党の288議席が、240議席くらいまで減ることになると、安倍首相が「勝敗ライン」とする自公で過半数を上回ったとしても、選挙後の自民党内の政局は流動化するだろう。