スマホにリモコン、掃除ロボット…
立ち上がるのを忘れた現代人の悲劇

 昨今は職場や家庭でパソコンやスマホの利用時間が増えて動く機会は減る一方です。それだけではありません。リモコンのおかげで座ったままテレビやエアコン、照明も操作できますし、最近は掃除もロボットがやってくれます。通販で外出せずに、重い荷物も持たずに買い物もできます。

 こうして生活が便利になりすぎた結果、立って動く機会がどんどん失われ、座りすぎで体を壊す人が続出しているのだから皮肉なものです。これこそ、現代人の悲劇です。

 仕事が長時間のデスクワークで移動は車、帰宅後もテレビやパソコンの前で過ごす生活が日常なら、座っている時間は平均をはるかに上回り、10時間以上も座る可能性があります。

 しかも、長く座っていると立ち上がるのが面倒になり、ますます動かなくなって不健康になるという悪循環を招きがちです。

「座る時間が1日11時間を超えると、座る時間が4時間未満の人より死亡リスクが40%高まる」。これは、前回も紹介したオーストラリアの研究機関が公表した研究データです。非常にショッキングな内容ですが、座れば座るほど私たちは死に急ぐごとになるのです。

 じっと座っているとき、全身の約7割を占める足の筋肉はほぼ動かず、30分も座っていると血流がみるみる悪化して、代謝機能も低下します。血液中には余分な糖や脂肪があふれ出し、やがて、糖尿病、高血圧、脳梗塞、心疾患、がん、メタボリックシンドロームなどさまざまな病を呼び寄せてしまいます。いわゆる「血液ドロドロ」状態と言えばイメージしやすいでしょうか。血流の悪化は万病のもとです。

 残業続きのデスクワーカー、座ったままテレビやスマホに没頭している人は要注意。毎日、寿命を縮める行為をしているようなもの、極端にいえば自殺行為です。

 その座る時間が最も長いのが日本人なのです。あなたは大丈夫でしょうか?

 健康で長生きしたいなら、食事や運動ばかりに気を使うのではなく、ついつい座り続けてしまう「間違った座り習慣」の見直しも忘れずにしたいものです。「座りすぎない」、たったこれだけで健康寿命は延ばせるのですから。