スタート時は、あえて本を読まずに
自由な発想でイメージをふくらませる

季里(きり)デジタルえほん取締役プロデューサー、女子美術大学アート・デザイン表現学科教授

季里 世界観や雰囲気を伝えるという点でいうと、若い4人のクリエイターが『希望をはこぶ人』のメッセージから発想を広げ、それを「作品」にしたことが良い結果を生んでいると思います。

 クリエイターたちは、あえて本を読んでいない状態で『希望をはこぶ人』の中のフレーズをいくつか抜き出したものを受け取り、本の雰囲気を想像しながら自由に制作に臨んだんです。

 一人ひとりが受け取ったフレーズとそれぞれの経験とを重ね合わせて本の世界観を解釈し、そのエッセンスを絵本動画という作品にしていきました。

 こうした作り方によって、観た人に「こんなふうに人を感動させたものって一体なんだろう」と興味を持っていただけるものができたんじゃないかと思います。

『希望をはこぶ人』の絵本動画を制作したクリエイターたち。 左から巽祐子さん、中山沙織さん、松本愛里さん、伊是名真希子さん

石戸 今回は広告的な要素を排除して、「世界観さえ共有できればいい」という方針でしたよね。もしも「このメッセージを伝えてください」などと指定されていたら、できあがったものはもっとマーケティング的な映像になっていたでしょう。

 「どう感じたかを自由に表現していい」と言っていただいたことで、新しい「作品」が生まれたと思います。

松井 個性を持ったクリエイターの方々に表現していただいたことで、私自身も新しい発見がありました。「あのフレーズが、人によってはこんなイメージで解釈できるんだ」ということがわかって、おもしろかったんです。

 『希望をはこぶ人』のメッセージに触れた人は、それぞれが少しずつ異なる世界観を持っているんだと思います。クリエイターの方たちが解釈した新しい世界観を、絵本動画を通じて共有することで、この本への共感の輪がさらに広げられる可能性を感じます。


※再生ボタンを押すと音声が流れます(再生時間4:50)