新銀行東京の業績が持ち直してきた。しかし今はコスト削減や一時的な利益の発生で黒字化しているにすぎない。設立目的である中小企業金融の確立には乗り越えねばならない壁がまだ残る。
経営再建中の新銀行東京が、業績を持ち直してきている。
2010年度、本業の儲けを示す実質業務純益で開業以来初の黒字となる3億円を計上。当期純利益も11億円と、09年度に引き続き黒字を確保した(図①)。
今年度も、実質業純の通期目標額2億円を第1四半期で達成するなど、低空飛行ながらまずまずの業績を上げている。
新銀行東京といえば、甘い融資審査や、無理な人員や店舗の拡大など、かつてずさんな経営で赤字を垂れ流した銀行だ。開業から3年目の07年度には累積損失が1016億円にまで拡大した。
一時は解散論議までなされたが、08年度に東京都が400億円の追加出資を決め、なんとか首がつながった。そしてたまりにたまった累損の大部分を処理。“第2の創業”と位置づけ、再建にまい進してきた経緯がある。
そんな泥沼状態からここまで回復できた要因には、まず営業経費の大幅削減がある(図②)。店舗は新宿の1店舗だけに集約、最大で約750人いた従業員も4分の1ほどにまでリストラした。
また、「唯一、他の銀行より強みがある」(寺井宏隆社長)という自己資本比率の高さを利用し、有価証券の運用の質を変えたことも大きい。同行の自己資本比率は、銀行平均の11%に対し、28%と高い(図③)。そこで国債だけでなく、リターンが高い銀行の劣後債などにも手を伸ばしている。
こうして運用面での利回りを向上させるとともに、09年度には日本銀行から低金利で1200億円を借り入れ、運用額も拡大。結果的に運用収益は押し上げられ、08年度に17億円しかなかった有価証券利息配当金は、10年度には貸出金利息(24億円)より多い26億円まで増加した。
本業である貸し出しによる収益もわずかながら拡大している。開業当初、1・7%という超高金利で集めていた預金の多くが満期を迎え、調達のコストが低減。一方で、貸出金の利回りも改善しているため、利ザヤが拡大しているのだ(図③)。
そうはいっても、過去に積み過ぎた貸倒引当金の戻入益でなんとか純利益を確保しているのが実情。09年度、10年度共に、それぞれ純利益が16億円、11億円だったのに対し、貸倒引当金戻入益は42億円、21億円と上回る。いかにここに依存しているかわかるだろう。
こうした戻り益は、今後しばらくのあいだは期待できそうだが、いずれは枯渇すると見られる。10年度に41億円にまで絞り込んだ営業経費も、削減は「ほぼ限界」(寺井社長)だ。かくなるうえは、トップラインを引き上げるしかない。