国民にまったく伝わっていない
社会保障・税一体改革「成案」の中身

 臨時国会が始まり、マスコミの議論も震災前のアジェンダに戻りつつあるようだ。TPPが注目されているが、より大きな課題は、社会保障・税一体改革、消費税増税であろう。財務大臣は、今年度中に「消費増税準備法案」を国会に提出する意向を示しており、党内外の議論が始まる。

 消費税の最大の問題は、6月末に決定された「成案」なるものが、マスコミによって「しかと」され、国民にはまったくといってもよいほど中身が伝わっていないことだ。マスコミが無視した理由は、「どうせ菅政権では実現しようがないのだから、紙面を割いても無駄」というものであったのだろう。

 もう一つ理由がある。それは、次のことである。

「成案」の内容である、「なぜ消費税率を10年代半ばまでに、段階的に10%まで引き上げる必要があるのか」という理由は、自民党の経済金融担当大臣以来の与謝野チームが、厚生労働省を巻き込みながら作り上げたものである。しかし、その内容はあまりに専門的すぎて(役人的すぎて)、「国民への説明」という視点を欠いている。

 内容自体は、優秀な役人を集めた与謝野チームの労作だけに、実によくできている。消費税率を5%引き上げれば、「社会保障の安定財源の確保」と「財政再建(15年のプライマリーバランスの半減)」が両立するという内容で、非の打ちどころはない。

 しかし、これから述べるように、その内容はさっぱり国民には伝わってこない。

あまりに複雑・技巧的な
消費税引き上げの根拠

「成案」は、消費税率引き上げの根拠である社会保障に必要な経費を、「機能強化」「機能維持」「消費税率引き上げに伴う社会保障支出等の増」の3つに分けている。「機能強化」はさらに、「制度改革に伴う増」「高齢化等に伴う増」「年金2分の1」の3つに分けられている。