細かい年代別では、たとえば25~29歳だと、男性は約1550万円なのに対して、女性は約7573万円と約5倍も差がある。年齢が上がるにつれてその差は大きくなり、40~44歳は男性の約1800万円に対して、女性は1億354万円で約5.8倍の開きが出ているのだ。

 しかも、2015年9月からの1年間の25~54歳の女性へのヘパリン類似物質の処方件数は、前の1年間に比べて急増しており、男女比では5倍以上の差が出ている。

 ヘパリン類似物質の処方が増えている背景には、「美容アイテムとしての『ヒルドイド』の流行が考えられる」として、女性たちが美容目的でヒルドイドを求めている実態を明らかにしたのだ。

ひとりの無駄遣いが数千円でも
まとまると93億円になる

 さらに、健保連では必要性の低いヘパリン類似物質の処方が、日本全体ではどのくらい広がっているかも試算しており、それが冒頭の金額だ。

 処方されたのがヒルドイドなどのヘパリン類似物質のみのレセプトのなかから、保険請求の病名が皮脂欠乏症や皮脂欠乏性湿疹などの「皮膚乾燥症」だったものを紐づけしていくと、その薬剤費は2年間で約10億円。1年分では5億円になる。

 これをもとに、健保連全体のデータと厚生労働省の「概算医療費データベース」の医療費を比較すると、必要性の低いヘパリン類似物質の処方の全国的な推計額は93億円にのぼるという。

 たとえば、ヒルドイドソフト軟膏(25g)を1本出してもらうためにかかる費用は、健康保険適用前だと約5000円。70歳未満で3割負担の人の自己負担額は1500円程度だ。

 美容目的でヒルドイドを求める人は、「たかが数千円のことで、ケチケチしなくても」と思っているかもしれない。だが、たかが数千円でも、多くの人が同じように考えて行動した結果、93億円もの無駄遣いを生み出し、健康保険財政を圧迫する一因を作り出しているのだ。

 前出の五十嵐健祐医師も、この数字に驚きを隠せなかったという。