木田知廣 著 1429円(税別) |
この原稿を読んでいる方は、すでに投資を始めているだろうか。
書店には、「1年間で○百万円儲ける」などの扇情的なタイトルがついた「投資本」が平積みされ、政府の「貯蓄から投資へ」のかけ声も勇ましく響く。投資先だって、株に不動産にFXとよりどりみどり。まさに、1億総投資家時代に突入したように見える。
ところが、実際にはまだ多くの人は投資を始めていないのが日本の実情だ。
なぜだろう?
冷静に考えれば、この超低金利のご時世、投資をしない合理的な理由は見あたらない。定期預金に預けていたって利息の額はスズメの涙。一方で、昨今の社会保険庁の問題で、老後を保証してくれるはずの年金がアテにならないことは日に日に明らかになってくる。将来の経済的な不安に備えて、投資によってより高い利益を狙っていくのが正しいことは、論を俟たない。
それでも多くの日本人は、投資の第一歩を踏み出さないのだ。
もちろん、投資をしたほうが良いのは多くの日本人が気づいている。だから、「投資に興味があるか?」という質問には、大多数の人がYes、と答える。ところが、実際に投資という行動に踏み切れないのは、ひとえに心理面での障壁が高いからだろう。
考えてみれば、私たちはお金に関して正式な教育を受けたことはなく、体系的な知識を持っていない。そんな中で、「投資で損をしてしまうのではないか」という不安感と、「額に汗して働いたお金が尊い」という先入観が交錯したとき、多くの投資家予備軍が「引きこもり」状態に陥ってしまうのはうなずけるところだ。