仕事で重要なのは、
「完璧を求めるが、完璧にこだわりすぎない」というバランス感覚

「ビジネスのビジネスはビジネスである」という表現があります。ノーベル経済学賞を受けたミルトン・フリードマンの言葉です。その心は、「ビジネスの目的は、結果を出すことである」。そして、結果を出すために重要なのが「時間との付き合い方」です。

 私は仕事において、安易な手抜き工事はせず、常に完璧を求めるようにしています。と同時に、完璧にこだわりすぎないようにもしています。一見すると矛盾しているようですが、この点は仕事をするうえでとても大切なポイントです。

 ビジネスというのは、一定の時間内に限られた経営資源を活用してできるかぎり質の高い成果を上げること。その経営資源の中でも、ひときわ重要なのが「時間」です。

 完璧を求めることはすばらしい。だがそうすると、ときに時間が足りなくなってしまう。時間が十分にないのなら、その限られた時間の中でベストを尽くすしかありません。その割り切りができないと、いつまでたっても次の仕事に着手できなくなってしまいます。

 これは、「時間がないからこの程度でいいか」というスタンスとは違います。妥協するのではなく、限られた時間内で精一杯の完璧を目指す、ということです。

 では、何点ならば合格と言えるか。人によってまた状況によって答えはまちまちでしょうが、私は80点くらいのイメージが合格の最低ラインだと考えています。100点以上が「エクセレント(クライアントが「WOW!」と驚き、感動するレベル)」だとすれば、80点以上は「グッド(クライアントの期待にそこそこ応えるレベル)」ということです。

 プロフェッショナルと認められるレベルの完璧度を追求したいのなら、限られた時間の中であっても、あなたの仕事に対してお客様が喜んでお金を払ってくれる水準をめざしたいものです。

時間の3大特徴

 すばらしい人生を送るうえで最も貴重な資源は何かと問われれば、私は迷いなく「時間」と答えます。あなたの人生の目標がどのようなものであれ、時間が足りなければそれを達成することは不可能だからです。

 そもそも論で言えば、時間という人生の資源には、いくつかの特徴があります。

①平等性
  世の中には、不合理、不公平、不平等の例がゴマンとあります。その限りにおいては、神様は決してフェアではないと思わざるをえません。

 しかし、時間だけは誰にも平等です。富める者も、貧しき者も、男性も、女性も、国籍の違いも関係なく、1人ひとりに与えられた1日は24時間だし、どれほどお金を積んでも過ぎ去った時間を取り戻すことはできません。

 いまを去ること900年近くも昔に、白河法皇は「賀茂川の水、双六の賽、山法師、是ぞわが心にかなはぬもの」と嘆かれたとか。賀茂川の流れだけでなく、法皇であっても時の流れをコントロールすることはかなわなかったのです。

②不可逆性
  投資に失敗してカネを損しても、人に去られても、火災で工場が焼けてしまっても、情報ファイルを失っても、何らかの形で後日取り戻したり、修復したりすることは、程度の差こそあれ可能です。しかし、英語にも「Time flies like an arrow.(光陰矢のごとし)」という諺があるように、いったん弓から放たれた矢と失った時間は、二度と戻ってはきません。

 二度と戻ってこないということは、「時間とは目減りする財産である」ということです。そう考えてくると、「時はカネなり」という表現は大きな間違いで、正しくは「時は命なり」であることに気づかされます。

③マネジメント可能性
  第3の、そして最も重要な特徴は、「マネジメントが可能」だということです。

 先に、時間とは目減りする財産だと述べました。けれど私たちにとって救いなのは、時間とはマネジメント可能なものでもあるということです。1は等しく24時間しかありませんが、工夫しだいでは自分の時間をやりくりして効果的に使うことができるのです。