さて、先月の本連載『立憲民主党を「にわかヒーロー」に祭り上げたSNSの恐ろしさ』で述べたように、私はとりわけSNSが社会に与える影響を問題視しています。多くの人がSNSにハマって1日に何十回とアクセスし、また長時間そこに滞在するのは、自らの意思による行動というよりも、SNS企業の仕掛けによってそう仕向けられている側面があります。

 まず、最先端のデザイン理論(persuasive design)を駆使してインターフェースをデザインし、SNS上で単に投稿を1つ読むだけでなく、様々なコンテンツを消費して長時間、滞在するように仕向けています。

 また、たとえば“プッシュ通知”機能(新たな書き込みがあったなどの知らせ)でユーザが何度でもアクセスするように仕向けています。これを繰り返すうちにユーザーは、プッシュ通知がなくても新しい更新という“報酬”を求めて、自分から何度もアクセスするようになります。

 “引っ張って更新”機能(スマホの画面を下にスワイプしたらSNSの表示が更新される)は、どのような新しい更新という“報酬”があるかを求めるユーザのワクワク感を高める点で、実はカジノのスロットマシーンと同じ役目を果たしています。つまりSNSは、それを提供する企業の様々な工夫により、本人の意思と関係なく、それにハマる中毒性を備えているのです。

 今回、貴ノ岩が横綱の説教中にもかかわらずスマホをいじったり、それを咎められた貴ノ岩が日馬富士を睨んだという報道もありましたが、それにも彼がスマホを通じて、日頃からSNSにアクセスしていた影響があるのかもしれません。

 というのは、SNS企業はユーザーの気を引くために、内容や色使いなどセンセーショナルなコンテンツをたくさん提供するので、それに馴染んでしまううちに、人間はロジックや合理性よりも直感や衝動で判断・行動するようになってしまうからです。先の米国大統領選で、トランプ氏が当選に至ったのがその典型例です。

スマホで会議に集中できない
“貴ノ岩現象”は角界だけにあらず

 ちなみに、このように考えると、横綱という目上の人間の説教中にスマホをいじってしまったという“貴ノ岩現象”は、実は世の中に蔓延していることに気づきます。

 たとえば会議の場、さらには1対1で話している場でもスマホを机の上に置いて、プッシュ通知機能でSNSの更新やメールが来たことがわかるとすぐにスマホをいじり出す人は、たくさんいます。若い世代のみならず、政治家などかなり偉い立場の人でもそういう行動をする人は多いのが現実です。

 しかし、そもそも1対1で話しているときに机の上にスマホを置くというのは、目の前の会話よりもSNSやメールの連絡の方が大事と言っているのに等しい点で、これは非常識な行動と言わざるを得ません。実際、米国人でも、会話中に相手がスマホをいじるのを不快に感じている人はたくさんいます。