2016年度の医療費の改定で、紹介状なしで大病院を受診した患者から特別料金を徴収することが義務づけられた。
これは医療機関の機能分化を進めるために導入された制度だが、来年4月から特別料金徴収の対象となる大病院が拡大されそうなのだ。
家庭医制度で患者の受診を
コントロールするイギリスの医療
「いつでも、どこでも、だれでも」。この標語に象徴されるとおり、日本の医療制度の特徴としてあげられるのが医療機関へのアクセスのよさだ。患者が自由に、どこでも好きな医療機関を受診できる。このような医療体制をとっている国は、世界中探してもまずないだろう。
たとえば、イギリスの公的医療制度(National Health Service=NHS)は、財源のほとんどが税金で賄われ、原則的に無料で受けられる反面、制約も多い。住民は、あらかじめGP(General Practitioner)と呼ばれる家庭医を選んで登録し、日常的な診療はすべて家庭医が行う。
緊急時を除いて、患者が勝手に家庭医以外の病院を受診することはできず、専門的な治療が必要だと家庭医が判断すると、専門病院に紹介されるシステムになっている。
専門的な治療が必要でもすぐに影響がない場合は1年以上待たされることも多く、国民の不満が大きいなどの問題もあるが、イギリスでは家庭医がゲートオープナー(門番)となって大病院の受診に歯止めをかけることで、専門病院の医療資源を効率よく使う方法がとられている。
一方、日本では健康保険証1枚あれば、病院だろうと診療所だろうと、規模の大小を問わず、全国どこの医療機関でも患者の自由意志で受診できる。しかも医療費は全国一律で、どこでもほとんど変わらない。
こうした制度の中では、自分や家族が具合の悪いときに「どうせなら設備の整った大きな病院で診てもらいたい」と思うのは当然の流れだ。医療制度の設計、そして個人の嗜好が、病気の種類や症状の大きさにかかわらず、大病院に患者が集中する構図を作り出したといえるだろう。