欧州の財政危機の成り行きを見て、日本の財政は他人事だとは思えない。現在の欧州諸国の対応を見ていて、「これはまずい」ということがいくつもある。
一方、わが国を振り返って、もしも日本がそうした危機に直面したとき、果たして適切かつ迅速な対応が採れるかどうか、今ひとつ自信が持てないというのが、筆者の正直な実感である。
これまでの金融危機や自然災害にも共通することだが、「絶対に起こらない」という前提で、「緊急時の備えは何も準備しなくてもよい」と判断することは危険だ。想定外の備えを具体的にイメージしておくことが、ぜひとも必要であろう。
【欧州危機の教訓①】
政治決断は市場のスピード感に追いつけない
ギリシャに端を発した財政危機は、2011年11月にイタリアの財政問題へと本格的に波及した。イタリア国債の保有リスクが顕在化し、市場の混乱をどう収拾するかが焦点になっている。
しかし、EFSF(欧州金融安定化基金)のレバレッジ案が始動するのは2012年初を待たなくてはいけない。むしろ、EFSFのスキームが稼働する手前で、限界を見透かされて、ESM(欧州安定メカニズム)への衣替えやECBの買入れなどの腹案が議論されている。
同じことが日本で起こったならば、どう対処するのだろうか。たとえば、日本で長期金利が上昇し、政府債務が発散するリスクが高まったとき、債券市場に介入する方法として挙げられるのは、(1)日銀が資産買入基金を使って買い切りを増やすことや、(2)公的機関が長期国債購入を増やすこと、がある。それで十分なのか。
一方、需給対策とは別に、日本政府は財政収支の悪化を早急に改善させるビジョンを見せることを迫られる。その場合、日本政府は必要な幅だけ消費税率を速やかに引き上げられるのだろうか。