日中、日韓の不仲を一番喜ぶのは北朝鮮

――北朝鮮をめぐって大国間はどのような解決策を見出すでしょうか。

 色々な可能性を考えておくべきです。

 たとえば、トランプと金正恩の間で話し合いが成立したらどうするか。もちろん可能性は低いですが、金主席が「アメリカまで飛ばせるICBM(大陸間弾道ミサイル)は廃棄します。核は開発するけどテロリストに売ったりはしません」と約束し、アメリカが、「だったら現体制は保障してあげる」なんて合意したらどうなるでしょう。

 北朝鮮が仮に長距離ミサイルを放棄したとしても、日本全体を射程に入れられる程度のミサイルなら200発は持っています。安全圏にいるアメリカに、日本が「お願いします」とすがっているだけで、有事の備えとなるでしょうか。結局、現状の枠組みでは北朝鮮の核の脅威から日本は逃れられません。

――日本はアメリカ頼り一辺倒でなく、中国とも親しくするという手はないですか。

 米朝合意ができれば、そこに休戦状態になっているだけの朝鮮戦争当事者として中国が絡まないはずはありません。韓国ももちろん絡みます。中国が嫌がっているのは、戦争になって巻き込まれたり、難民が押し寄せてきたり、統一朝鮮がアメリカの同盟国になったりすることでしょう。だから、ちょっと不愉快だけど今のままがいいなと思っている。でも、戦争には中国は参加しなくていいし、難民が出れば国連でケアする、北朝鮮は中国が管理していいから、といった手打ちがアメリカとの間でできたらどうでしょう。

 だから、日本も中国や韓国は嫌いだ、と感情論を振りかざしていてはだめです。日中、日韓がほとんど話もしない状況を一番喜ぶのは北朝鮮ですよ。

 仮に中国に民主主義が導入されたら、おそらく10年のうちに中国は分裂することになるでしょう。それは果たして我が国の国益に叶うことなのか。私は中国の現体制が素晴らしいとは全く思いませんが、中国の分裂を避けるために日本に何ができるのかということは考えるべきだと思います。食料や水、エネルギー、人口問題など、日本が貢献できることは一杯ある。実を取る方策を真剣に考えるべきではないでしょうか。