英語学習が「論理力アップ」の最短ルート
言語の習得そのものは、きわめて身体的・直感的な要素(暗示的知識)を含んでいます。プロ野球選手は「バットのここに当てて、レフトに打ち返そう」などと考えたりはしていませんし、一流のピアノ曲奏者は「この順序で指を動かそう」と思う間もなく指も動かしています。言葉を操る能力は、スポーツや音楽の技能に近い側面があるのです。
ただし、外国語の学習成果は「母語理解の深まり」としてフィードバックされる点が決定的に違います。英語を学ぶことを通じて、これまで気づかなかった日本語のルールに気づき、文章や事象をよりロジカルに把握する力が身につきます。無論、インプットだけでなく、書いたり話したりのアウトプットにも好循環がもたらされます。
これこそが「英語で頭がよくなるメカニズム」です。
適切な外国語学習は、母語が持つ暗黙のロジックを発見する体験と表裏一体です。ですから、論理的な思考力を高めたければ、まず外国語を学ぶことです。ここで鍛えられた知力は、「学校のお勉強」の枠を超えて、一生涯にわたって役に立ちます。
仮説を立てて学問上の探究を進めるとき、ビジネス上の課題を解決するとき、生活上の諸問題に向き合うとき……あらゆる局面で強い味方となってくれるのは、言葉を正しく使って論理的に考え、的確な言葉で表現する力です。
この力こそが、非ネイティブの子どもが英語を学ぶ「最大のメリット」です。もしそうだとすれば、多大なコストを支払ってまで、あえて子どもをバイリンガルに育てる必要はないと思いませんか?
(本原稿は斉藤淳・著『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』から抜粋して掲載しています)
※注
記事中の参照文献・おすすめ教材などは、こちらのサポートページでご確認いただけます。
「世界最高の子ども英語」専用サポートページ
https://booksdiamond.wixsite.com/childenglish
J PREP斉藤塾代表/元イェール大学助教授/元衆議院議員。
1969年、山形県生まれ。イェール大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。研究者としての専門分野は比較政治経済学。ウェズリアン大学客員助教授、フランクリン・マーシャル大学助教授、イェール大学助教授、高麗大学客員教授を歴任。
2012年に帰国し、中高生向け英語塾を起業。「第二言語習得理論(SLA)」の知見を最大限に活かした効率的カリキュラムが口コミで広がり、わずか数年で生徒数はのべ3,000人を突破。海外名門大合格者も多数出ているほか、幼稚園や学童保育も運営し、入塾希望者が後を絶たない。
主な著書に、『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』(ダイヤモンド社)のほか、10万部超のベストセラーとなった『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』(KADOKAWA)、『10歳から身につく問い、考え、表現する力』(NHK出版新書)、また、研究者としては、第54回日経・経済図書文化賞ほかを受賞した『自民党長期政権の政治経済学』(勁草書房)がある。