飲料業界の下位集団の“常連”だったアサヒ飲料が気を吐いている。

 震災で自社工場や包材工場が被災した影響で、11年1~11月の累計売上高が業界全体で前年同期比1%増に留まったのに対し、同社は8%もの伸びを記録したのだ。

 アサヒ飲料といえば、10年前には3年連続の赤字に沈み、事業売却すらも噂にのぼる飲料業界の弱小企業でしかなかった。6年前、たった6.8%しかなかった業界シェアは二ケタの10%に乗り、11年6月末時点でキリンビバレッジを抜いて4位に浮上。2011年12月期の通期業績も、売上高営業利益ともに過去最高を達成する見込みだ。

「“三本柱”に経営資源を集中したことが奏功した」。菊地史朗・アサヒ飲料社長は躍進の理由を語る。

 三本柱とは、缶コーヒー「ワンダ」、ブレンド茶「十六茶」、「三ツ矢サイダー」などの透明炭酸飲料である。同社の売上高の60%前後を占めるこの3ブランドに、営業活動や広告宣伝など経営資源を集中した。缶コーヒーでは、弱かった若年男性層の開拓を狙ってAKB48をテレビ広告に起用するなどしてシェアを伸ばした。

 その結果、11年1~11月の累計売上高は、ワンダで前年同期比107%、十六茶で同112%、透明炭酸飲料で同105%の伸びを示した。飲料業界では、震災対応で伸びたミネラルウォーター以外のカテゴリーが伸び悩む企業が多いなか、主力のカテゴリーの全てで伸びた同社は際立っている。

 さらに、新カテゴリーの後押しも効いた。アサヒ飲料は10年7月にハウス食品から「六甲のおいしい水」のブランドと生産施設を買収。買収前には3.6%しかなかったミネラルウォーター市場のシェアは、これで一気に10.2%にまで伸びた。

 100年以上の歴史を持つブランドの“再開発”も効いた。もともとアサヒビールが料飲店向けに卸していた業務用炭酸飲料のウィルキンソンを、量販店向けにペットボトル化して販売したところ、「店でしか飲めなかったウィルキンソンが手軽に味わえる」と評判になり、売上げは前年比64%増となった。

「12年は売上高を4%伸ばして年間シェアで10%台を確保する」と菊地社長は意気込む。

 飲料業界は、首位の日本コカ・コーラグループが約30%、2位のサントリー食品が約20%のシェアを確保する2強の状態で、10%前後のシェアを握る3位の伊藤園、4位のアサヒ飲料、5位のキリンビバレッジが混戦を繰り広げている。

 果たしてアサヒ飲料はこの混戦から抜け出すことができるか。追われる伊藤園も追うキリンビバレッジも当然、対策を打ってくるだろう。数年前の「茶飲料」のような大ヒットカテゴリーの誕生は期待できない。決定打がないなか、12年も飲料メーカーの乱戦模様は続きそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

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