今年(2011年)の1月、NECのパソコン事業を実質的に買収した中国レノボ・グループ(聯想集団)を、このコラムで「アルバイトから多国籍企業の総帥にのぼりつめた“チャイニーズドリーム”」と題して取り上げた。

レノボの調達力を生かす

 NECは私が来日した1980年代に98シリーズのパソコンを開発し、一時は日本国内でシェア50%を握り、「パソコンの雄」と賞されたほどの栄光をもつだけに、同事業の中国企業への事実上の売却に対しては、社内の反発も強かったと聞いている。

 しかし、先日の日本経済新聞の報道によると、「NECの国内シェアは18%程度と、今年4~6月期まで富士通と激しい首位争いを繰り広げてきた。ところがレノボとの統合会社がスタートした7月からの3カ月はシェアが3.2ポイント上昇。NEC単体で20.5%、レノボとの合算で27.6%と、富士通を大きく引き離した」という。

 10月17日にネットにアップされた大河原克行氏の「デジタル業界事情」という記事によれば、NECとレノボの合計シェアが27.5%であるのに対し、2位の富士通は18.4%、3位のソニーは16.1%、4位の東芝は15.7%と、まさにグループとしての市場占有率は圧倒的だという。

 ここまでシェアを伸ばした理由の一つは、価格競争で優位に立っているからだといわれる。その秘密はレノボの調達力にあると見られる。

 報道によれば、NECの販売はほぼ国内のみで年間約270万台しかないが、一方レノボは、優に3000万台を超える台数を世界で売っている。そのスケール・メリットが、NECとレノボとの統合効果に出ているようだ。

 この12月、NEC主催の私の講演会があった。講演の中で、講演を聞きに来られた企業の方々に一枚の写真を見せた。それはレノボが1984年にスタートした時の事務所の写真だった。会社を設立した母体は、中国政府の研究機関である中国科学院の計算機研究所だったが、予算に苦しんでいた当時の計算機研究所は20万人民元(当時レートでは1ドル=2.80元)しか出資できなかった。そのため11名の研究員でスタートした会社のオフィスは、面積が20平米もない警備員用の小屋だった。