東京海上日動火災保険とパイオニアが共同開発した「ドライブレコーダー」の貸与サービスをめぐって、一部契約者に現金還元をしていることが判明し、業界に波紋が広がっている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)
「国内大手損保で初めて個人のお客様向けにドライブレコーダーを活用したサービスを開発し、自動車保険の特約としてご提供することにいたしました」
東京海上日動火災保険がそう大々的に打ち出し、2017年4月から提供を始めた新サービス「ドライブエージェントパーソナル」。パイオニアと共同開発したドライブレコーダーを自動車保険の契約者に貸与し、運転中の映像や音声を記録することで事故時の対応に活用したり、強い衝撃を検知した場合は提携する事故受付センターに自動発報し、担当者と通話できる個人向けの特約だ。
その特約をめぐって、パイオニアの福利厚生子会社(パイオニアウェルフェアサービス)が、グループ社員向けに配った1枚のチラシが波紋を広げている。チラシには「モニター・紹介キャンペーン」と題し、パイオニアグループの社員(嘱託を含む)および同居家族が同特約を付帯すると、給与の支払い時に1万円キャッシュバックすると書かれていたからだ。
同特約の保険料は月650円。1万円の現金還元があれば、1年以上にわたって保険料が実質的にタダになる計算となり、金融庁が法律(保険業法300条1項5号)で厳しく規制している「特別利益の提供(保険料の割引)」につながる恐れがある。
特別利益の提供が固く禁じられていることは、保険会社の人間であれば誰しも知っているが、それに反したと疑われる行為をなぜ東京海上は行ったのか。