――そうした国際関係を考え合わせると、中国国内で緊張感が高まる可能性はありますか。

 中国は民主主義国家ではないが、暴動が多数発生する点からも、中国共産党も世論を無視できない。そして、これまで暴動のほとんどが地方で起こっていたが、今後は「ナショナリズム」に起因する暴動が、都市部で広がる可能性がある。

 そこで、今、共産党が最も恐れているのは外国ではなく、国内の反乱だ。先日起きた中国漁船員の韓国海洋警察隊員殺傷事件でも、中国政府はナショナリズム的な世論の高まりを受けて、かなり強硬姿勢に出ている。もし韓国に謝罪をすれば、国内から政府批判を招くことになりかねないからだ。

 中国で高まりを見せるナショナリズムは、もともと中国共産党が鼓吹してきたもので、日本への歴史問題に対する認識も、90年代初めに党の働きかけではじまった。しかし、2005年頃からはむしろ社会の側から広がっている。

 こうしたナショナリズムの高まりが、日本だけでなく、日本と結びつく中国政府への批判にもつながると、中国政府が最も恐れる事態になる。もし、その批判を抑えようとするならば、今後、中国は必然的に国内のナショナリズムに大きく左右されることになるだろう。

政局に関わること以外は興味なし
外国から姿の見えない「潜水艦」日本に

――各国が国内政治優先になる年、日本はどう外交政策を展開していくべきでしょうか。

 日本の場合、中国のように世論によって外交政策が左右されるわけではない。むしろ国内政治が不安定であるために、国際関係への関心が著しく低いのが実態だ。このことは、国際関係に関連する報道が、政局に関わる場面にのみ、集中的に行われることからも明らかである。

 実際、普天間問題は鳩山退陣につながる事件として、尖閣諸島の船長釈放問題は菅政権の痛手となることとして注目された。つまり、日本の政局に関わる事態であれば著しい注目を集めるが、そうでない限りは外国で何が起ころうが、国民が関わろうとしないのだ。すなわち、日本は外交政策の展開以前に、外交への国民的な無関心によって、世界から自らを閉ざした潜水艦のような存在になりつつある。

 中国との関係では、日本の首脳が中国へ極端に譲歩する事件が起これば、あらゆるところから袋叩きにあうだろう。しかし、そうならなければ、たいして問題にならないほど、無関心である。ユーロ危機については、ユーロ圏と中国の貿易関係は密接で、ユーロ圏の景気後退が中国に直接与える影響は非常に大きい。日本は対中貿易が大きな比重を占めることから、ユーロ危機は他人事ではないが、これも大きな関心を呼んでいないのが現実だ。