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現場力を伸ばす先端IT活用の鉄則

事件は現場で起きている!
いまこそリアルタイム・ビジネスの実現を急げ

安間裕
【第1回】 2012年1月18日
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 そういった意思決定は、「意思決定をするべきタイミングと場所で行われて、初めて、意味のあるもの」になります。そのことは、ビジネスの(というより“商売=あきない”の)基本中の基本であることは言うまでもないところだろうと思います。

 例えば、魚屋さんが、常連の大阪のおばちゃんに「値切り」の交渉をされている際に、その場で即決できなかったら、おばちゃんに呆れられ、文句を言われた挙句に逃げられてしまっても仕方ありません。

 「どこまで値切られていいのか」の意思決定は、太古の昔から、単発の利益だけではなく、そのおばちゃんが今後もたらすべき価値(生涯価値:Life Time Value)なども含め、その場で判断されるべきであり、このことは現代のMBAの教科書を読まなくても、常識中の常識でしょう。

 つまり、日本人(に限ったわけではありませんが)は、DNAの中に「リアルタイム・ビジネス」にこそ、「最高の瞬間」が存在すると、綿々と引き継いできたわけです。まさに、「事件は会議室で起きているのではなく、現場で起きている」のです。

「バッチ処理」なんて悪弊はもういらない

 翻って、現代のビジネスにおけるIT活用の実態はどうでしょう。ITにスポイルされた我々は、いつの間にか、ITという本来、「リアルタイム・ビジネス」を実現するべき「武器」を正しくその方向に使うのではなく、それどころか、実際はITを「制約」として置いてしまい、結果、「バッチ処理」という、リアルタイム性を放棄した概念を生み出し定着させてしまったのです。

 「バッチ処理」とは、一定の期間、蓄積されたデータを、まとめて処理をすることです。金融機関などの大量データ(昨今ではビッグ・データなどと呼び、動画系など、非定形のデータを包含して呼称しているようです)は、通常、日中に蓄積され、夜間にまとめて処理をされます。

 日中はオンラインで行われるべき(金融では勘定系と呼ばれる振込み処理などの)準備処理が、コンピュータ資源の多くを費やして行われており、夜間に、まとまったデータを一括で「バッチ処理」(金融機関では企業間の取引処理や給与振込みなどなど)を行います。

 そのことそのものは、この仕組みが採用されだした時点では決して悪いものではなく、当時の(または、現在でもいくばくかは残っている)処理性能の限界により、コンピュータ資源をできる限り平準化し、有効活用しようという、創意工夫のなかで生み出されてきたものだと思います。

 問題は、それを、我々ITの専門家が、いまの時点でも「制約」として肯定してしまい、その常識を打破しようという姿勢すら持っていないところにあります。

 もっと言えば、私は、我々「ITの専門家」を自負する輩が、例えば、エンジニア同士の何気ないやり取りのなかで「夜間バッチ・ウインドー(バッチ処理のために費やせる夜間の時間、21:00~8:00とかが一般的)を考慮しないシステム設計をしちゃうなんて、君はITの常識をわかってないねぇ」などとバカにしたりしている。そういったことを見聞きするたびに、いつも間にか商売のDNAを忘れ、ビジネスの本質を忘れ、ITの常識にしてしまっているんだと思うと、本当にがっくりきちゃいます。

 バッチ処理の問題は、昨年3月の震災後に発生した、みずほ銀行のATMのトラブルを通じて、記憶に新しい方もいらっしゃるのでしょう。

 あの事故は、振込み処理が特定の口座に集中し、夜間のバッチ処理が所定の時間で終わらず、そのせいで、翌日のオンラインも影響を受け、雪だるま式に問題が大きくなってしまったといわれています。

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グローバル経済のなかで地盤沈下の進む日本。再びIT先進国として飛躍するためには、ITをビジネスの武器とする発想が必要だ。ビジネスは現場が肝心。現場の意思決定のスピードアップなど現場力向上に先端ITをどう生かしていけばよいか、IT業界のフロントランナーがわかりやすく解説する。

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