バブル崩壊後の長期不振の主因は
日本人の勤勉と倹約

 日本人は、勤勉で倹約家である。高度成長期の日本人は、懸命に働いて大量に物を作り、倹約に努めて少量の消費で我慢したから、企業が工場建設のための資材を調達することができたし、人々が貯蓄に励んで銀行に預金したから、企業は銀行から設備投資資金を借りることができたのだ。

 しかし、高度成長が終わりバブルが崩壊、企業が設備投資をする必要がなくなると、こうした勤勉と倹約が日本経済の弱点となった。人々が勤勉に働いて大量の物を作っても、倹約して少量しか買わなければ、作られたものは売れ残る。そこで、売れ残ったものを輸出すると、輸出企業が持ち帰ったドルを売るのでドル安円高になり、輸出は無限には増やせない。

 そこで企業は生産を減らし、雇用を減らした結果、失業が増えた。そうした失業者を雇ったのが政府の公共投資であり、そのための費用が莫大な財政赤字となったのである。

 みんなが「正しいこと」をすると、全員がひどい目に遭う場合がある。「合成の誤謬」と言われるものだ。

 例えば、劇場火災の際、各自が非常口に向かって走るのは「正しい」が、全員が非常口に集中することで皆が逃げられなくなってしまう。銀行の経営破綻の噂を聞いて預金引き出しに走るのは正しい行為だが、全員がそうしてしまうと本当に銀行が破産し、預金者全員が大変な目に遭ってしまう。同様に、人々が豊かになろうとして勤勉に働き、倹約に努めると、場合によっては皆が貧しくなってしまうのである。