簡単にいうと、歯周病の慢性的な炎症反応によって、アルツハイマー型認知症における脳の炎症が、さらに“増強”されるというわけだ。

アルツハイマー型認知症に
歯周病が関与する原因とは

 もっとも、実際はもっと複雑だ。

 すべての物質は脳内に入る際に、血液脳関門と呼ばれる“関所”を通過しなくてはならない。これは、脳へ血液中の有害な物質が入らないようにして、大事な神経細胞を防御する機構である。当然、人体に細菌感染が生じた際に作られる炎症性物質も、容易には脳内に侵入できない。

 それなのに、なぜ、歯周病の炎症反応が脳内へ波及するのだろうか。

 歯周病は先に述べたように慢性の炎症性疾患であるが故、その炎症性物質が、長期に渡って血液脳関門を攻撃することになる。その結果、患者によっては、血液脳関門が正常に機能できなくなり、炎症性物質が脳内に侵入する状況を可能にしてしまうと考えられる。

 読者の方々にとっては驚愕の事実かもしれないが、口腔内に潜んでいるはずの歯周病細菌自体さえも、脳内へ侵入するのを許してしまうことがある。実際に、アルツハイマー病患者の脳から歯周病の原因細菌が見つかっているのだ。

 しかし、現在のところ、このような歯周病がかかわる炎症反応だけで、アルツハイマー型認知症が発症するとは考えにくいとされている。認知症の発症時期を早めたり、認知障害の程度を強めたり、進行を早めるという病態を修飾する作用があるのではないかと考えられる。

 アルツハイマー型認知症に歯周病が関係しているという事実を逆手に取れば、歯周病治療や口腔ケアをすることで、アルツハイマー型認知症の発症予防や、症状の軽減、進行を抑制できる可能性があるということだ。