半年だけ働く。
村上アシシ著
定価:1,512円(税込)

山本:子育ての問題も大きくキャリアに立ちはだかります。私の場合は、介護と並行して育児があるけれど、不動産や株式の配当の上がりで食えるセミリタイア状態なので、時間を自由にやりくりできます。自分の人生とは別の人生を預かる以上、どこかで妥協しないとならないな、と。背負う荷物の重量が増える、これは人生の縦軸の問題。そして、時間という横軸の問題もある。自分は今年45歳で15年後も同じように稼げるかはわからない。病気するかもしれないし、家内が具合悪くなったりする可能性もある。いま手掛けている投資だって、直下型地震でも来ておじゃんになるかもしれません。確かに人生を楽しみたいけれど、今の生活を充実させることが、将来に対して最適解なのか考えると気落ちするんです。

収入のポートフォリオを組むのが真の安定

村上:結婚、子どもの事例については僕自身が経験していないので、正直言うと、そのノウハウはほぼない。でも仮に結婚、子どもができたとなったら、サラリーマンに戻るという選択肢もありだと思ってる。実際、子どもがお受験するのに肩書きが必要だからという理由でサラリーマンに出戻った元同僚もいます。人材の流動性が高まった現在なら、いくらでもシフトチェンジできる。20代、30代のうちに一度フリーランスを経験しておけば、子どもが自立して時間ができたからまたフリーランスに……というのも難しくない。一回やってみろ、と。サッカーでもクラブ生え抜きの選手よりも、多くのクラブを移籍してきた選手の方が年俸は上がりますから。

山本:一方で、いままで金看板で飯を食ってきた人、たとえば新聞社、出版社、通信社など会社の名刺で取材してきた人が、フリーランスのライターになった途端に食えなくなることもありますよね。ゲームクリエイター、俳優、脚本など、クリエイティビティが高く、かつやりたい人が多い世界は、金看板である会社の権威を失うとドンと年収が下がる傾向にあります。そういった業種はスキルの比較がしにくいし、特定の人脈にぶら下がって仕事をもらう形だと、そこから声がかからなければ収入を失う。フリーランスになっても会社に勤めているのとさほど変わらない。

村上:確かに、クリエイティブの分野は難しいかもしれない。フリーランスでもクライアントと対等な立場で仕事内容と金額を自分でコントロールできなければ、負け組となって安い料金でこき使われるだけですからね。ただ、業界によっては業務代行のエージェントが増えていて、自分に人脈がなくても独立しやすい土壌がこの5年ほどで整備されてきています。その分、仲介料は抜かれるけど、ちゃんとプロのエージェントが介在して、適材適所に配置してくれる。フリーランス市場の成熟に伴って、企業側も変わってきていて、プロフェッショナルのフリーランスを期間限定で採用することへの抵抗感も薄れてきている。アメリカに遅れること数十年、やっと日本で、フリーランス市場の環境が整いだしてきたんです。

山本:なるほど、健全ですね。