ちなみに、マイニングには莫大なの電力が掛かる。中国のマイニングに掛かる電力はアルゼンチン1ヵ国分とといわれている。そのため、電力が安かった中国の地方で行われていたのである。

 さらにいえば、最近のフィンテックの流れの特徴は、IT的な発想にある。たとえば送金はEメールを送るイメージで、届けば終わり、のような発想だ。しかし、決済インフラはそんなに単純では済まない。たとえば全銀システムは日本の個人・企業の振り込みを司っており、1日に約600万件を決済する。これだけの数になると銀行間の資金の決済も1件1件いちいち処理してはいられず、まとめて差額決済(清算)する。これをブロックチェーン技術でやろうとすれば、せっかく一度組んだブロックをまたバラして清算するといった必要があるはずだが、それは不可能だ。そもそもそれは書き換えに当たる可能性もある。

セキュリティとコストの面でも集中化へ

 セキュリティ面でも、分散型のシステムはどうしても手薄になるため、集中型が望ましい。さらにコストの面でも、よく新聞などに「ブロックチェーン技術を使えばコストが1/10」など書かれているが、例えば先ほどの全銀システムと比較をするなど、具体的な仕組みとコスト計算に触れている記事はほとんどない。ブロックチェーン技術の信憑性を高めるためにも、具体的に示してほしいものだ。ちなみに筆者はメガバンクの企画部でコスト計算を担当していた経験があるが、銀行のシステムや事務のコスト計算は極めて複雑だ。

 このように性能面も含め、金融機関や決済インフラのシステムは集中化の方向にある。三菱東京UFJ銀行がAWS(アマゾン・ウエブ・サービス)にシステムを一部アウトソースしたものも、分散化ではなく、セキュリティ・機能・コストを考えた「集中化」の流れの一環といわれている。

 ブロックチェーンに基づく仕組みは「分散型」と理解していた。しかし、事件が起こってみれば、現在の金融の仕組みとは違い、解決が困難になっている。しかも、NEM財団なる中央銀行のような中央集権的な組織も登場している。これは集中化の動きであり、自己否定にもなるのではないだろうか。ともあれ、利用者(一般ユーザー)を保護することが、金融の最も大事なことである。