【大学入試(芸術系学部)の想定問題】
あなたにとって「表現する」とはどういうことか、考えを述べてください。

低評価の解答例(2)

 表現とは自分の内面を他者に伝える行為である。古くから、人は様々な方法で自分の感情や思想を「表現」してきた。喜怒哀楽の気持ちを歌や踊りで表したり、自分が見た美しい風景を絵に描いたり、自分の思想や信念を文章として残したりしてきた。世界各地には絵画、彫刻、音楽、舞踊、文学など様々な形で人類の表現物が伝えられ、現代においても多くの人が創作に取り組んでいる。心動かされる体験をしたら誰かにその感動を伝えたいし、悲しいことがあれば誰かに伝えて慰めを得たい、そうした心理が表現行為の基盤にあり、それは昔も今も全く違わないのである。このように、表現とは感情を持つ人間とは切り離せない行為だといえる。(以上)

高評価の解答例(2)

 私にとって「表現する」とは生きる喜びそのものだ。私の表現手段はピアノだが、毎日何時間練習しても飽きることがない。辛い時、悲しい時でも、ピアノに向かっていると自然に心が落ち着いていくのがわかる。そして、以前よりも深い表現、以前よりも高度な表現ができた時、とても大きな達成感を感じる。
 私が一番大きな喜びを感じるのは、発表会で演奏する時だ。自分の思いが演奏の中で少しでも表現できた時、それが観客に伝わった時、この上のない喜びを感じる。より良い表現を目指していくためには、さらに一層厳しい練習が必要となるが、私は「ピアノで表現する」ことを人生の喜びとして、これからも練習に励んでいきたい。(以上)

「いいこと」を書いても
質問に答えていなければ不合格

2つの「低評価の解答例」に共通しているのは、「問題文で問われていることに答えていない」という致命的なミスです。

一見、正しい解答に見えるかもしれません。どこに問題があるのか、なぜ、問題に答えていないことになるのか、順に解説していきます。

低評価の解答例(1)は、問題文で問われていることが「どう取り組んでいくべきか」なのに、書いていることはひたすら「移住者を増やすことの意義、それが求められている背景」です。取り組みの内容については末尾の「市の魅力を全国にPRして移住者を増やし」だけで、中身が何もありません。その方法論こそを、書かなければなりません。

低評価の解答例(2)に書いてあることは、「人間にとって表現とは何か」という「表現一般論」です。聞かれていることは「あなたにとって」の表現です。書き手自身に引きつけた内容を書かなければ、問いに答えていることにならないのです。

このように、問題の意味を理解せずに書いている答案は非常に多く、一度指摘しても、二度、三度と間違う人が少なくありません。

このほかにも、下記のようなミスを非常に多く見かけます。

・「あなたはなぜ本学を志望しているのか理由を述べなさい」と聞かれているのに、どこの大学でも同じように言えることしか書いていない。その大学ならではの理由がない。

・「筆者の意見を踏まえ、あなたの考えを述べなさい」と聞かれているのに、筆者の意見を踏まえないで書いている

・「あなたは職場のリーダーとしてこれらの職場の課題にどのように取り組んでいくか」と聞かれているのに、「職場のリーダーとして」の視点がなく、第三者的な立場から書かれている