夢のハッピー・リタイアメント?
タイトルにもあるように、このコラムでの話は、一般に「オヤジ」と呼ばれる40代後半から50代前半の働き盛りの男性を念頭に置いたものです。平成元年(1989年)をピークに長期の景気低迷にあえぐ日本にあっても、この世代までは社会人としてバブル全盛期の景気の良さを体験しており、年金についても若者に比べると恵まれている(年金勝ち組)と見られています。
実際、老後の生活に多少の不安はあっても、深刻に考えている人は少ないのではないでしょうか。あと10年ほど働けば、趣味のゴルフや地元でのボランティア活動など充実した日々を送る自分の姿を思い描く人もいるかもしれません。また、年に1回は夫婦で海外旅行に行くことを考えている人も多いでしょう。しかし、残念ながら、こうしたハッピー・リタイアメントはもはやこの世代の人にとってさえも当たり前のことではなく、以下に述べるような状況では、一部の限られた人にしか許されない夢となりつつあります。
理想は「PPK」
老後について考える場合、お金の問題と並んで大切なのは健康の問題でしょう。できれば、元気に「ピンピン」生きて、最後は寝込まずに「コロリ」と逝きたいものです。実際、長野県佐久市は、亡くなる直前まで元気な人が多いことから、ぴんころ地蔵を建立して観光名所になっています。データを見ると、残念ながら本当に「ピンピンコロリ(PPK)」となる人はごく一部です。
65歳まで生存した男性の平均余命は2004年時点で83.2歳ですが、日常生活に支障をきたす健康上の問題がない「無障害平均余命」は77.6歳です(平成18年 国民生活白書)。つまり、その差の5、6年が何らかの障害により介護が必要な期間です。一般に老後というと、セカンド・ライフ、つまり定年退職した後の心身ともに健康な時期のことを考えがちですが、実際には介護が必要なサード・ライフを経験する人が多いのです。子供に面倒をかけたくないので、体が弱ってきたら介護付き老人ホームに入ることを望む人も多いようですが、介護付き老人ホームは一時金以外に最低、毎月20万円程度もかかります。