高齢者ケア「地域包括ケアシステム」はなぜ変容したのか

高齢者ケアの基本原則の歩みは

 前々回の第91回で「地域包括ケア」の内容の変遷を追った。厚労省の「地域包括ケア研究会」が2009年から毎年のようにまとめてきた報告書を辿ることで、高齢者ケアの基本原則の歩みを検証できる。

 2010年3月に公表された第2回報告書では、「脱施設」「在宅重視」そして「24時間のケア付き住宅」という画期的な提言を見てきた。これがその後どうなったのか――。

 3年後の第3回目の報告書(2012年度事業、2013年3月発表)では、今も使われる立体的な「植木鉢モデル」が登場する(図1)。5つの要素も、看護やリハビリ、福祉サービス、保健、住まい方などが加わって重層化した 。

 厚労省は以下のように植木鉢図を説明する。


 地域包括ケアシステムの5つの構成要素(住まい・医療・介護・予防・生活支援)をより 詳しく、またこれらの要素が互いに連携しながら有機的な関係を担っていることを図示したものです。
●地域における生活の基盤となる「住まい」「生活支援」をそれぞれ、植木鉢、土と捉え、 専門的なサービスである「医療」「介護」「予防」を植物と捉えています。
●植木鉢・土のないところに植物を植えても育たないのと同様に、地域包括ケアシステムで は、高齢者のプライバシーと尊厳が十分に守られた「住まい」が提供され、その住まいにおいて安定した日常生活を送るための「生活支援・福祉サービス」があることが基本的な要素 となります。そのような養分を含んだ土があればこそ初めて、専門職による「医療・看護」「介護・リハビリテーション」「保健・予防」が効果的な役目を果たすものと考えられます。
●植木鉢そのものは「住まい」であり、「住まい方」とは家族や周囲との人間関係で、植木鉢の材質にあたります。


 ここで、新しいメーセージが届けられた。「医療・看護」と「介護・リハビリ」「保健・予防」は専門職によって担われる。つまり、介護保険と医療保険の制度により国家資格などを持つ専門職が担当し、「住まい・住まい方」と「生活支援・福祉」はこの両保険制度の枠外でサービスが提供されるということだ。