“どう伝えるか”は相手の
理解度から逆算して決める

 先日あるIT企業の製品担当者によるマーケティングツールの新サービス発表のプレゼンテーションを聞く機会がありました。その新サービスは前評判も高く期待して聞いていたのですが、正直とても残念な内容でした。

 その担当者は製品概要を説明するばかり。想定ユーザーであるわれわれプランナーにとってそのツールがどのように役立つのか、という肝心な部分はほとんど語られず、利用するメリットがまったく見えてきませんでした。

 私が最も知りたかったのは、この新製品を実際に使用したとき、ユーザビリティー面が類似の競合製品に比べてどのように優れているかという点です。

 彼が難しい専門用語を多用して説明していた詳細なスペックは、製品のサイトを見ればすべて載っています。カンファレンスのなかでのプレゼンテーションだったので、大勢の聴衆の前で個別に質問をすることもできません。結局そのプレゼンテーションからは得るものは何もなく、時間をムダにしてしまったという印象だけが残りました。

 このプレゼンテーションの本来の目的は、われわれユーザーにその製品の特長を理解させ、興味を持ってもらうことだったはずです。

 それには、自分のメッセージを一方的に相手に“伝える”のではなく、“伝わる”ように、つまり相手の頭に中にそのメッセージが理解されて残るという状態をつくりあげることが必要です。送り手が“伝える”という発想のみにとらわれ、受け手の理解を無視して情報発信しているだけでは、決して相手に正しく“伝わる”ことはありません。

 聞き手の立場に立って、どんなストーリーで、どう伝えたら腑に落ちて相手の頭の中にメッセージが残っていくかをまずは考えるべきです。そして、そこから逆算して“どう伝えるか”を決めるのです。

 そのためには、相手に理解してもらいやすいシンプルなメッセージを発し、わかりやすいストーリーを展開することが何より重要なのですが、先ほどのプレゼンテーションは、そもそも内容が難し過ぎることが最大の問題でした。ただでさえ難しいIT領域の話を専門用語を多用して説明されたのでは、話についていくだけで大変です。