受け取りすぎた生活保護費を
返還させることの是非

 この“地雷”の正体は、生活保護法改正案に盛り込まれそうな費用徴収規定、「受け取りすぎた生活保護費は、税金の徴収と同じように強制的に返還させてよい」という規定だ。この「受け取りすぎ」は、いわゆる不正受給ではなく、悪意のない単純な受け取りすぎだ。もちろん、現在も、受け取りすぎた分は返還することになっている(いわゆる生活保護費不正受給の場合には、福祉事務所が「生活の維持に支障がない」と認めた場合に限り、生活保護法78条の2によって保護費からの“天引き“が認められている)。問題は、生活保護費の差し押さえは禁止されているにもかかわらず、強制的に徴収できることになる可能性にある。

 誰もが、「税金や社会保険料は払わなくてはならない」と考えているだろう。収入があったら、所得に応じて納税し、社会保険料を納付しなくてはならない。脱税が明るみに出れば追徴課税が追いかけてくる。滞納すれば、差し押さえを含む強制的な手段によって徴収される。社会保険料も同様だ。日本社会は、その約束の上に成り立っている。

 しばしば「税金も払わずに、私たちの税金で暮らしている」と言われる生活保護の人々も、この事情は基本的に変わらない。税金や社会保険料を納付する義務は、あまりに低所得ゆえに免除されているだけだ。

 問題は、その「あまりにもの低所得」である生活保護費から、税金の徴収と同様の強制力をもって何かの費用を徴収することの是非だ。月々の生活保護費は、もともと「健康で文化的な最低限度の生活」を想定した金額だ。理由が何であれ、何かの費用が強制的に徴収されれば「最低限度」以下になる。このため、生活保護費からの“天引き”が可能な場面は、ギリギリまで制約されてきた。行政といえども、税金をはじめとする公租公課を生活保護費から差し押さえることはできない。

 なお、行政が税金滞納などを理由として持ち家や給料を差し押さえることはあり得るが、その場合も生活保護基準に相当する分は残されることになっている。誰にも「健康で文化的な最低限度」以下の生活をさせないことが、行政の義務だからだ。