先進国の自動車メーカーは
技術的優位性が低下する

 1886年、ドイツのゴットリープ・ダイムラーはガソリンエンジンを搭載した4輪自動車を開発した。同年には、同じくドイツでカール・ベンツがガソリンエンジンの3輪車を開発した。これが、現代社会に普及している自動車の出発点だ。自動車は多くの人に所有され、主には目的地までの移動の手段、物流の手段として使われてきた。

 現在、ハイブリッドシステムを含め、内燃機関を搭載した自動車からの脱却が進んでいる。そのマグニチュードは、動力システムの変革(電気化)に留まらず、モビリティ革命というほどに大きい。

 モビリティ革命を考えるキーワードが“CASE”だ。Cはコネクティビティ(インターネット空間への接続の可能性)、Aはオートノマス(自動運転、自動化)、Sはシェアード(共有、シェアリングエコノミーを念頭に置いたもの)、Eはエレクトリック(電気自動車)を指す。

 CASEをもとに考えると、モビリティ革命の先に期待される自動車のコンセプトは、所有されるのではなく多くの人によって共有される。加えて、ネットワーク空間と接続しながら自律的にバッテリー駆動を用いて走行するプロダクトとしての性格を持つようになる。

 この変革は、これまでの自動車業界に大きな影響を与える。世界全体で考えると、現在の自動車市場での競争優位性はトヨタ、フォルクスワーゲンなど先進国の企業にある。それは、5万点にも及ぶといわれる部品の最適な摺り合わせを実現する、技術・経験の蓄積(クラフトマンシップ)があるからだ。

 しかし、電気自動車に必要な部品数は内燃機関搭載車の6割程度に減ると考えられている。その生産は、部品の摺り合わせではなく、ユニットの組み立てによって行われる。車体、ボディー、バッテリーなど、性能の高いユニットを購入し、プラモデルのように組み立てるのである。それは先進国メーカーが1世紀以上の時間をかけて培ってきた技術面での優位性を低下させるだろう。