【教員試験の想定問題】
子どもたち一人ひとりが持つ豊かな才能や能力を伸ばしていくために、あなたは教員としてどのように取り組むか、考えを述べなさい。

【低評価の解答例】
子どもたちはそれぞれが豊かな才能・能力を持った存在であり、教員には、それを伸ばしていくことが求められる。特に近年では国際化が進む中、外国人と触れ合う機会も増えており、小学校でも外国語教育に力を入れることが重要だ。そのために私は次のことに取り組んでいきたい。
まず、子どもたちが楽しみながら英語に触れる機会を作っていく。たとえば教室の黒板、机などに「blackboard」「desk」と書いたカードを貼って置き、子どもたちが日常的に英語に触れ関心を持つような仕掛けを作っていきたい。また、英語の絵本の読み聞かせをしたり、英語の歌を歌ったりする時間を作ることも効果的だ。絵や音楽という親しみやすい素材を使うことで、単語の意味はわからなくとも、英語に触れることができる。さらに……

【高評価の解答例】
子どもたち一人ひとりの持つ豊かな才能・能力を伸ばすためには、教員が子どもの持つ力を意識的に引き出すことが必要だ。そのためには、子どもをつぶさに観察し、それぞれの子どもの得意分野や才能に気づくことが大事だ。
たとえば「○○さんは作文がうまいね」「○○君は字が上手だね」など、子どもたちの良い部分を見つけ積極的に声をかけることで、子どもは自分の優れた才能や能力に自信を持ち、さらに頑張ろうという気持ちが湧いてくる。また、それぞれの能力が活躍できる「場」を用意することも有効だ。勉強は苦手でも、行事や学級活動で活躍する子もいる。たとえば、音楽が得意な子どもに合唱大会の指揮を任せる、書道が得意な子にクラスの標語を書いてもらうなど、それぞれの優れた才能・能力が活きる場を用意したり、スポットが当たる場面を作ったりすることが大切だ……

低評価の解答例は、「子どもたち一人ひとりが持つ豊かな才能や能力を伸ばしていくために、あなたは教員としてどのように取り組むか」を聞かれているのに、ひたすら「外国語教育にどう取り組むか」を論じています。出題内容を強引に自分の書きたい方向に誘導して、事前に用意した筋書き通りに書いているのです。

1文目の「子どもたちはそれぞれが豊かな才能・能力を持った存在であり、教員には、それを伸ばしていくことが求められる」は、まだ問題文を踏まえていますが、2文目の「特に近年では国際化が進む中、外国人と触れ合う機会も増えており、小学校でも外国語教育に力を入れていくことが重要だ」で一気に出題の趣旨から外れて、「外国語教育」という自分が書きたい話に誘導していることがわかります。

こうした答案を書く人は、学習指導要領などに書かれてある内容、たとえば「言語能力の育成」「伝統や文化に関する教育の充実」「外国語教育の充実」などのテーマであらかた答案の筋書きを決めておいて、出題の意味を考えずにそちらに強引に話を誘導しているのです。

普通に考えれば、「子どもたち一人ひとりが持つ豊かな才能や能力を伸ばす」というのは、どんな分野であれ、その子が伸びそうなことを見つけてその力を引き出すことですから、外国語教育に限定した書き方をするのはおかしい。「話のすり替え」が起きているのです。

見当はずれの「こじつけ解答」は
二重の意味で評価を下げる

キーワードに強引に結びつけて書くという例は、これに限らず、「主体的・対話的な学び」「ICTを使った授業展開」「学校と地域との連携」などたくさんあります。

もちろん、これらのキーワードを使うのにふさわしい出題であれば使ってよいわけですが、たとえば「子どもたちの一人ひとりの豊かな能力を伸ばしていくためにどうすべきか」という出題で、「学校と地域との連携を進めていくべきだ」と書いたら、明らかに見当はずれであるだけでなく、強引にこじつけて書いていることが採点者にわかりますから、二重の意味で評価を下げます。

とりわけ教員試験では、基本的に出題テーマが教育論などに絞られているので、「あらかじめ用意したストーリーで書こう」ということが起きやすいのです。教員試験を受ける人が学習指導要領の中身に目を通しておくのは大事なことですが、問題文の意味と出題の意図を理解せずにその中のキーワードを使ったら、見当はずれの解答になります。

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