あなたは「目指すべき英語」を
間違えている!?

 英語を懸命に身につけようとしているけれど、目指す方向を間違えたがゆえに必要以上に苦しんでいる人もよく見かけます。
「ペラペラ話せるようになりたい」「ネイティブのように華麗に話せるようになりたい」。そういう夢を持って取り組んでいる人は、実は英語を身につけづらいのです。
 それはなぜでしょうか。説明していきましょう。

ゴールドマン、マッキンゼーで成果を出す人は
「英語ペラペラ」ではない

 私はゴールドマン・サックスとマッキンゼーという会社で働いてきました。そのなかでグローバルに活躍する日本人を多く見てきました。彼らがどのような英語を使っていたか、イメージできるでしょうか?
 もしかすると、ネイティブスピーカーのような綺麗な発音で、難しい英単語や表現を随所に散りばめ、よどみなくペラペラと話をする─。そんな姿を想像するかもしれません。しかし、彼らの英語はそうではありません。
 むしろ、日本語アクセントの残る英語で、聞き慣れた単語や表現のみを用い、ゆっくりと手短に話をする。そういう人が多かったのです。
 そして、そうした英語を使う人のほうがきちっと結果を残していました。彼らが英語で仕事をしている姿を目にすると、事前にイメージしていた姿とその実態に大きなギャップを感じるはずです。

目指すべきは「シンプルな英語」だ

 こうした「簡単で、わかりやすく、ゆっくりした英語」は、別の言い方をすれば、「用件をまとめて、簡単な単語や表現のみを用い、しっかり伝える」というスタイルであるということです。
 彼らが使いこなす英語の特徴をひとことでまとめれば「シンプルな英語」と言えるでしょう。だらだらと余分な口を開かずに、わかりやすい表現を用い、日本語アクセントを過度に気にせず、自信をもって、明確な主張を伝える。
 多くの人は英語を難しく考えすぎていて、また、難しい英語を使おうとしすぎていて行き詰まっています。「ペラペラ話せるネイティブ」を目指したがゆえに、目的が不明確になってしまい、迷子になってしまっているのです。
 本書が目指すのはネイティブのようなペラペラ英語ではありません。日本人が身につけるべきは「シンプルな英語」なのです。
 詳しくはCHAPTER3でお伝えしますが、「シンプルに伝える英語」を身につけるための6ステップを簡単にご紹介しておきます。

ステップ1 「ブロークン」でもいいからとにかく話す
ステップ2 正しい発音を「まず頭で」理解する
ステップ3 英文を「前から」解釈しながら読む
ステップ4 「音読とセットで」ひたすら聴く
ステップ5 結論と根拠を明確にして「ロジカルに」書く
ステップ6 かならず「フルセンテンスで」話す

 この6ステップは、とてもシンプルなアプローチです。それは、「基本に忠実に学ぶ」ということでもあります。
 英語の勉強法に詳しい人にとっては、目新しいことは少ないかもしれません。しかし、これこそが英語力を伸ばすうえでのいちばんの近道であり、最短最速で英語を習得する方法なのです。

苦労した経験をもとに編み出した「最強の勉強法」

 先ほども少しお話ししましたが、私は大学を卒業後、ゴールドマン・サックスに新入社員で入り、その後ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得し、マッキンゼーで働いてきました。そして現在は、ビジネスパーソン向けの英語習得プログラムを主宰しています。
 こうお伝えすると「海外での生活が長かったのではないか?」「帰国子女だったのではないか?」などと疑問に思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
 両親はともに日本人。ハーバードでMBAの勉強をするまで長い海外生活を送ったこともありません。英語学習も大学の受験勉強がメインでした。英語を身につけやすいような特別な環境にいたわけではないのです。英語に興味があったことは事実ですが、スタートはみなさんと同じだと思います。
 本書では、いわゆる「純ジャパニーズ」「非ネイティブ」で本格的な海外生活の経験もない私が、いかに英語を身につけてきたかをすべて披露します。
 私もいくつもの壁にぶつかりながら、いろんな遠回りをしてきました。英語はすぐに身につく、とは言いません。それなりの努力は必要です。しかし、私の経験をお伝えし、その経験の中から得られた数々のノウハウ、テクニックを共有することで、本書を読むみなさんが「余計な努力」をしなくてもすむよう願っています。

「日本人に合った」英語習得の方法がある

 私の英語習得プログラムは、もともと英語の苦手な友人のために開いていた勉強会が始まりでした。その勉強会を通じて、その友人は1年半でTOEIC300点台から900点超えを実現したのです。
 一方で私も、英語に自信はあったものの、上級者なりに英語への苦手意識がありました。そこで、初級者のみならず、上級者にも求められる実践的な英語習得法を考えるようになったのです。
 日本人は誰でも、どんなレベルでも「英語が苦手」と言います。それはなぜだろうか、と考え続けました。
 辿り着いた答えは、日本人の目指しがちな「ペラペラ話す」という目標がいけない、ということでした。そこから「シンプルな英語」を効率的に習得するにはどうすればいいかを体系的に整理し、プログラムに落とし込んでいったのです。
 そのような経緯で開発された英語習得のプログラムには、私のこれまでの経験やノウハウ、スキルがすべて入っています。壁にぶつかりながら、遠回りをしながら、導き出した「答え」をここにすべて注ぎ込んだつもりです。
 おかげさまで結果も次々に出ています。
 たとえば、TOEIC400点台からスタートし、スコアを400点以上もアップさせ、その後ニューヨークオフィスに異動し、数少ない本社勤務の日本人として活躍するアパレル会社の女性がいます。
 英語への苦手意識を払しょくし、海外本社との20人の電話インタビューを突破し、入社の機会を勝ち得たITエンジニアの男性もいます。
 さらに、日本人が意見を通すための力を身につけ、国際条約締結の場で、日本の国益を背負い、多国籍間の交渉業務に従事する女性もいます。
 本書ではこのプログラムの全容をお伝えし、日本人全体の英語力アップに貢献したいと思っています。

「勉強法」で迷っていては一生英語はできない

 本編に入る前に、ひとつお伝えしておきたいことがあります。
 英語がなかなか上達しない人に見られる共通点についてです。それは「いろんな勉強法を試し続けている」ということ。
 英語は、「今日取り組めば明日結果が出る」というようなものではありません。よって勉強を続けるなかで、「他にもっと効率のいい方法があるのではないか」とあれこれ探したくなってしまう人もいるでしょう。
 これには、2つのパターンがあります。
 ひとつは「目の前の学習が辛いため楽なアプローチを探してしまう」というパターン。もうひとつは「英語学習のアドバイスをくれる人がまわりにいるため、途中で他のアプローチにも手を出してしまう」というパターンです。
 後者のパターンはいろいろと試していて良さそうにも見えますが、それぞれの練習への集中度は散漫になりがちです。よって、頑張って取り組んだにもかかわらず、思ったほどの成果が感じられません。やはり、やると決めたらひとつのことを信じてやることが大切です。半信半疑であれば取り組まない方がいいとも言えるでしょう。
 目の前の学習アプローチを信じて取り組む。ぜひそれを忘れないでほしいと思います。そして、その信じるべきアプローチこそが、これからご紹介する英語習得法であることを念押ししておきたいと思います。

 それでは早速、シンプルに伝えるための英語勉強法を伝授していきましょう。まずは、英語学習者が陥りがちな「誤解」から見ていきましょう。