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電子書籍全盛時代に現れた最新印刷技術
プリント・オンデマンドは出版界の救世主となるか

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第184回】 2012年2月22日
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 プリント・オンデマンドは、そこに現れた救世主のようなものである。売れる部数もわからないのにたくさんの部数を印刷して、倉庫に貯めておく必要はない。注文が来たら、その都度小ロットで印刷すればいいのだ。出版社が持っている書籍のデジタルファイルを、クリックひとつで印刷した発送したりできるデジタル・アセット・マネージメントシステムが行き渡っていることも助けになっている。もちろん、敏捷なデジタル印刷技術の進歩がこの背後にあることは、言うまでもない。

 プリント・オンデマンドは、出版社が出す従来のプリント版書籍以外にも、いろいろな使い方がある。たとえば、電子書籍で出されたものをやっぱり印刷された本として読みたいという場合、オンライン書店によってはそうしたサービスを提供するところもある。したがって、電子書籍かプリント版書籍かを選べるような本の場合、プリント版書籍をクリックするのは、実はユーザー自身がプリント・オンデマンドの注文ボタンを押しているかもしれないわけだ。アメリカでは自費出版もブームになっているが、電子書籍で出した本を希望部数だけプリント・オンデマンドにかけてプリント版として手に入れることもできる。

 プリント・オンデマンド業界には、現在いろいろなプレーヤーがいる。グーグルも投資しているエスプレッソ・ブックマシーンは比較的小型の機械で、現在大学の図書館や学内書店などに置かれている。一部の書店の店頭にも設置され、デジタルファイルを受信した後、数分でカラー表紙までついた書籍が出てくる。出版業界で長年流通業務を請け負ってきたイングラム社は、ライトニング・ソースという傘下会社を設立して、大手出版社にプリント・オンデマンドへ移行して、コストがかかる従来型の印刷の重荷を肩から降ろすように働きかけている。

 意外な参入者は、アマゾン。電子書籍時代に新手の出版社として存在感を増している同社は、数年前にプリント・オンデマンド技術会社のブック・サージを買収し、現在は配送センターに機械を配備、出版社向けにここで印刷機能を提供している。これら以外にも、デジタルプリンティング技術を持つ企業はどこも、プリント・オンデマンドへの攻勢をかけているところだ。

 電子書籍時代に現れた新しい印刷方法。小回りの利くプリント・オンデマンドの考え方は、まさに現代的なソリューションと言える。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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シュンペーターの創造的破壊を地で行く世界の革新企業の最新動向と未来戦略を、シリコンバレー在住のジャーナリストがつぶさに分析します。

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