金があるだけではダメ
文化資本を持てる家庭環境とは

 日本の場合だと、マンガよりも古典文学、仲間内でしか分からない方言よりも就職活動などで論理的に共通語を話す能力、ジャンクフードを早食いする能力よりも綺麗なテーブルマナー…といった要素が「文化資本」となりえる。

「文化資本を有する人が社会的な階層を上げやすくなっていることは確かで、それがいわゆる経済格差や貧困の連鎖に結びついていると考えられます。たとえば、『教科書を座って読む』という行為も身体化された文化資本ですから、学校教育自体が中央の文化を基準にして作られているとも言えます」

 家に本棚があれば、それが読書習慣へとつながる。座って文字を読む行為そのものは学校教育と親和性が高く、学校教育で評価されれば高い学歴を得やすくなる。これらの要素はすべて文化資本であり、それぞれがリンクして増大していくことが分かる。

「文化的再生産」、つまり文化資本が親から子へと受け継がれていくというのは、どのような構造なのだろうか?

「文化的再生産の過程では、地域や学校のコミュニティなど様々な要素と関わりがあります。その中でも、最も大きな役割を果たすのは家庭環境でしょう。文化資本の有無は幼少期の経験の積み重ねによるところも大きく、いつでも本が読める環境を用意したり、コンサートや美術鑑賞の経験などを子に与えるかどうかは、親の嗜好や経済状況に左右されるのです」

 仮に宝くじで3億円が当たったとしても、それだけで高い文化資本を持てるとは限らない。幼少期に親から文化資本を持てるような経験を提供してもらえるかどうかが、非常に大きなカギを握っているのだ。

 また、北条氏は「その人が文化資本的なものに価値を見出すかどうかは、属しているコミュニティに影響を受けやすい」と話す。たとえば、日本なら地方のヤンキーよりも都市部の富裕層のほうが、文化資本的なものに価値を見出しやすいコミュニティといえそうだ。