第2次世界大戦後、主要先進国では1次産業のシェア縮小、所得の向上、年金・福祉の充実により、60歳以上の労働力率は大きく低下した。高齢となったら働かなくても済む社会が到来したのだ。

 日本の場合も同様の傾向をたどってはいるが、低下の程度は小さいため、日本は主要先進国の中では、高齢者が最も働いている国となっている(韓国の65歳以上だけは日本を上回っているが)。

 なぜ、日本の高齢者の労働力率がこれほど高いのかについては、所得水準や年金・福祉の水準において、日本がとりわけ低いとは言えないし、高齢者の職業構成における農業・自営業の比率の高さも、これだけの差を生むとは考えられない。

 やはり、日本人としての国民性(あるいはアジア的価値観)、すなわち、良く言えば「勤勉さ」、悪く言えば「働き続けることにしか生き甲斐を見出せない人生観」に理由を求めるのが妥当であるように思われる。

 海外諸国は、大きく労働力率を低下させた後、近年ではむしろ、反転上昇する傾向にある。日本も同じ反転上昇の動きを見せているが、上昇に転じた時期は海外諸国よりかなり遅い。気楽に老後の生活を楽しむという、欧米流の考え方になじむようになるのに時間がかかり、気がついたときには、むしろ欧米の方が高齢化対策で先を行っていたという格好だ。

 欧米の場合は、高齢期には働かない者が多くなっていたので、再度、働くようになれば、かなりの労働力が生み出される。20代から50代までの40年間の就業年齢を、60代までの50年間に拡大すれば、労働力は25%増となる勘定である。欧米における移民人口が、約10%であるのと比較しても小さくない割合だ。

 日本の場合は、あまり高齢者の労働力率が低下しない段階で、反転上昇に転じたので、実は、高齢就業拡大による労働力増の効果は、欧米に比べて小さい点に留意が必要だ。そういう意味からは、むしろ、これまで主婦としての役割を重視してきただけに、今後の伸びしろの大きな女性高齢者に期待される部分が大きいといえよう。

(統計データ分析家 本川 裕)