簡単な自分の脳タイプのチェック法
簡便な普段時の脳のタイプ判別法としては以下の項目が挙げられます。
普段、寝付きが良いタイプ、電車などの移動中など、どこでも寝られるタイプは「普段時・低覚醒タイプ」。
ベッドに入ってもなかなか寝付けず、移動中も寝れないタイプは「普段時・高覚醒タイプ」。
ストレス時の脳のタイプ判別法は以下の通りです。
次の日、重要なことがあっても眠れ、ストレス時もあまり変わらず、やや眠くなるタイプは「ストレス時・低覚醒タイプ」。
次の日、重要なことがあると寝付きが悪くなり、ストレス時はドキドキするタイプは「ストレス時・高覚醒タイプ」。
これは、脳波で分析すれば、一目瞭然なのですが、ストレス時に緊張するタイプの脳内にはハイベータ波が多く出現し、注意散漫になるタイプの脳内にはシータ波が混じってきます。
ハイベータ波が現れるのは、緊急モードの備えるために脳の覚醒を高め、準備をしていることになります。
一方で集中力が低下してしまうタイプは、根本的な原因はまだ未解明ですが、人間の身体にある交感神経が強く働くとそれを抑制しようと働く機能(ホメオタシス)が強く働きすぎてしまい、副交感神経がかなり優位になり、覚醒が下がり、眠くなることが考えられます。
実は、手術室で新人のお医者さんがめまいで倒れてしまう現象がこれなのです。
恐怖のあまり、交感神経が一過性に働き、心拍や血圧の急な上昇を抑えるために、身体が一歩手前で急ブレーキを踏むのです。
そのことにより、脳に行く血液が遮断され、パタッと気を失ってしまうのです。
この現象は正確には迷走神経反射(副交感神経反射)と呼ばれています。
つまり、ストレス時に注意が散漫になってしまうタイプは、これに似た現象が体内で起こっていることが考えられます。
そこで、必要になってくるのは、覚醒が下がらないように脳の興奮を高める作業です。
これには、ヨガの速い呼吸法(火の呼吸)以外に、本番への気持ちの持ち方でも大きく改善することができます。
覚醒を高める必要がありますから、単純にメダル取得などの「結果」を強く意識することで、高い集中力が保てるようになります。
つまり、「金メダルを絶対取る!」と公言し、実際に取ってしまうタイプは、自分の脳の特性をよく知っているアスリートといえます。
北島康介選手がこのタイプですし、平昌オリンピックで見事、連覇を果たした羽生結弦選手もこのタイプだと思われます。
ですので、普段、集中力が低くてもプレッシャーがかかることで、脳の興奮レベルが増していき、ちょうど良い集中状態、中覚醒状態がつくられるという訳なのです。やはり、大舞台には強いです。
ただ、唯一の弱点とすれば、序盤で良い成績を出し、やや安心してしまった場合にパフォーマンスが落ちてしまう傾向にあることです。
羽生選手も、初日が調子良いと二日目にパフォーマンスが下がる傾向にあり、逆に初日が悪いと二日目は最高の演技をしたりします。
実際、逆転勝ちが多いのも羽生選手の特徴です。
今回の平昌オリンピックでは、初日が素晴らしい演技でしたので、二日目が少し心配でしたが、やはりそこは王者なので、よく自分自身のメンタルについて研究をされている感じがしました。
普段から、羽生選手自身が、金メダルを取ることについて公言していることも、高い集中力を保つための秘訣だと思います。
一方、世界大会は連覇しているのにオリンピックだけ結果が出せないアスリートの場合は、日本人に多いストレス時に脳が興奮するタイプです。
このストレス時・高覚醒タイプは、逆にメダルなどの「結果」を意識しないメンタリティの方が功を奏します。
小平奈緒選手がどちらかといいますと、このタイプに当たると思います。
小平選手は、節々にオリンピックを特別視しない、いつも通りの気持ちで出ると公言していました。羽生選手とは異なり、金メダルへの発言も控えめなものでした。
これは小平選手が、様々な経験を通じて、あまり「結果」を意識しない方が、自分自身のパフォーマンスが上がることを良く認識していたからだと思われます。
プレッシャーがかかった状態で、いつも通りの気持ちでいることはとても難しいことなのですが、小平選手の場合、メダルという「結果」よりも自分自身の滑りを高めるという求道的なアプローチが、本番でのいつもと変わらないメンタリティを支えているように思います。
つまり、あくまでも自分のために滑るということです。
以前、陸上の桐生祥秀選手が、世界記録保持者(2018年3月時点)のウサイン・ボルト氏から、9秒台を出すには、「焦ってはいけない。自分のために走るんだ。とにかく楽しむことが大事だ」とアドバイスを受けていました。
これもウサイン・ボルト氏が、過剰な勝利意識、「結果」が逆にパフォーマンスを低下させてしまう現象についてよく理解しているということだといえます。
このストレス時・高覚醒タイプには、白鵬関の「稽古は本場所のごとく、本場所は稽古のごとく」というメンタリティがぴったりくると思います。
ここで、ご紹介した方法は、考え方を変える思考からのアプローチ法ですが、脳科学的なアプローチ法、つまり脳の構造を変えて、目の前のプレーに集中する方法が今流行りの「マインドフルネス」なのです。
プレーという「今」に集中するには、プレーだけに集中できるようにするためのトレーニングが別途必要なのです。
それは、筋トレで肉体を鍛えるかのごとく、脳に新しい回路を形成していくプロセスなのです。