競争力向上と巨大市場を背景に勢いづく中国勢、<br />新興国BOPビジネスをも射程に収めるケータイ産業例年よりも遅めの開催となった、今年のモバイル・ワールド・コングレスのエントランス

 スペイン・バルセロナで開催されているケータイ産業の世界的な展示会「モバイル・ワールド・コングレス(Mobile World Congress、以下MWC)」に、今年も参加してきた。

 例年よりも数週間ほど遅めの開催となり、日本の年度末の繁忙期と重なった今年のMWCだったが、それでも日本からと思わしき参加者が会場のあちこちで見受けられた。またこのタイミングに合わせて各社が新製品や新戦略を多く発表することから、会場は例年通りの賑わいを見せていた。

 特に海外市場や通信機器(基地局やバックボーンネットワーク)の状況を把握するには、ここに来なければ会えない人や知り得ない情報が多い。またケータイ産業に関係する事業者が一同に介するMWCは、さながら同窓会のような趣さえもある。私自身はトンボ帰りを余儀なくされたが、それでも業界関係者から「バルセロナで会おう」という連絡を多くいただくと、足を運ばざるを得ない。

 では改めて、今年のMWCはどうだったのか――すでにWebメディアをはじめ、新製品の報道はあちこちで行われている。そこで例によって、本連載では少し視点を変えて、MWCから浮かび上がるケータイ産業の俯瞰図を、いくつかスケッチしてみたい。

Android端末競争の先に何があるのか

 まずMWCの華と言えば、なんといってもケータイ端末である。特にここ2~3年は世界的にスマートフォンへのシフトが進み、フィーチャーフォンの展示はよほど注意深く探しても見つかるか、というところである。

 今回もご多分に漏れず、クアッドコアの高性能チップセットや、高精細の大画面パネル、また3D対応やクラウド連携、さらには消費電力性能等、およそ想像しうる端末性能のほとんどの領域において、高性能化が大々的にアピールされていた。