ウーバー死亡事故とFBデータ不正利用で再認識すべき先端IT企業の影Photo:AFP/AFLO

フェイスブックとウーバーに生じた
ハイテク関連企業の“影”の部分

 近年、今後の高い成長性に期待が集まり、世界中の投資資金がFANG(フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル)などの米国IT企業に投じられてきた。それによって、フェイスブックのPERが30倍程度に達し、アマゾンの時価総額は全米第2位になるなど、当該企業の株価はかなり高い水準にまで買い上げられている。

 順風満帆に見えるIT企業だが、彼らが抱える問題点を忘れることはできない。今回、フェイスブックユーザー約5000万人分のデータが、不正に英国のケンブリッジ・アナリティカ(CA社)という分析企業に渡っていたと報じられた。

 CA社はビッグデータを用いて、選挙時の有権者の行動に影響を与えるビジネスを展開してきた。当該企業の設立には、トランプ政権の首席戦略官を務めたスティーブン・バノン氏が関与していた。フェイスブックのデータが、トランプの選挙陣営に渡ったのではないかとの嫌疑が出ているという。

 一方、米アリゾナ州では、自動運転技術の開発を進めているウーバーテクノロジーズ(ウーバー)の完全自動運転車両が、歩行者を跳ねて死亡させる事故が起きた。自動運転技術は世界の自動車メーカー、IT企業がこぞって開発に取り組んでいる分野だが、今回の事故を受け、その安全性を見直すべきとの見方が増えている。すでにトヨタが米国での自動運転実験を一時中断するなど、影響は大きい。

 この2社の問題は、これまで期待を集めてきたIT、ハイテク関連企業の“影”の部分といえる。今後、投資家は、今まであまり意識してこなかった先端企業のマイナス部分を意識することが必要になる。そして、それらの企業が、そうしたリスクをいかにコントロールしながら、先端の技術を進展させるかが重要になる。