原発危険区域内の入院患者搬送を断る
批判にさらされた群馬県の緊急消防援助隊

大破する原発付近で苦渋の決断を下した救援隊<br />歪んだ批判を招いた「患者搬送拒否」報道の教訓前橋市消防局 消防司令長の戸丸典昭氏。

 震災から1年が過ぎた。1年前、多くの新聞やテレビは、被災地の出来事を集中豪雨のように報じた。それらの出来事の中には、報道で詳しく背景が伝えられなかったこともあり、読者の誤解を誘発させ、インターネット上で批判などが行なわれたケースもあった。今回はそんな出来事の1つを取り上げ、真相に迫りたい。

 私は、1年前の震災直後、気になった報道があった。それは、福島県に派遣されていた、群馬県の緊急消防援助隊を巡るものだった。

 3月11日の震災発生直後、総務省消防庁は、福島県にいた群馬県の緊急消防援助隊に、福島第1原発半径20~30キロ圏内付近の入院患者を搬送するよう打診した。そのとき、前橋市消防局司令長の戸丸典昭氏(55)を現場の責任者とする緊急消防援助隊は、この要請を断った。

 共同通信社は3月23日、その経緯を次のように報じた。カッコ内は筆者の注釈である。

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屋内退避区域の患者搬送拒否
群馬など3県の消防援助隊

 東日本大震災で、事故が起きた福島第1原発の半径20~30キロ圏内の屋内退避区域にいた入院患者について、総務省消防庁から搬送するよう要請を受けた現地の群馬、岐阜、静岡の計3県の緊急消防援助隊が「隊員の安全に不安が残る」として断っていたことが(3月)23日、分かった。

 総務省消防庁は「安全面に問題はないことは伝えた。しかし要請に法的強制力はなく、現場での判断にコメントはできない」としている。各地の消防当局によると、消防庁から(3月)16日、福島県の屋内退避区域での患者搬送依頼を受けた。しかし「詳しい状況が分からない上、特別な装備もなく出動に不安が残る」などとして断った。

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