IoTは「見守り」から始まる!
どれだけ消費者目線に立てるかが勝負
では、IoTというのは普及しないのでしょうか。
この答えは、正直なところ私にもわかりません。
「公衆電話があるのに、電話を持ち歩く人などいない」
と言われたのに、携帯電話はほぼ100%普及しました。
一方で、3D映画の『アバター』のヒットで、
「誰もが自宅でも3D映像を観たいはずだ」
と言われたのに、3Dテレビは普及していません。
このように、人間の予想などまったくアテになりません。
実際に、IoT業界では専門家ですら、「IoT世界で実現するのは、玄関の電気をつけることだけだ」と半分ジョークで自嘲気味に語る人もいます。
そうした中で、仮にIoTが普及するのであれば、私は「見守り」だと思っています。
言うなれば、これからやってくる超高齢化社会で、どれだけ高齢者を「機械が」見守ることができるか。それが鍵を握っていると考えます。
たとえば、高齢者が観ているテレビがその高齢者を観ている。すなわち、テレビにカメラが取り付けられていて、万が一高齢者が倒れたりしたら、テレビが即座に救急車を呼ぶ。
これなどは、私が定義する「見守り」です。
今の自動車業界を見てもらうとわかりますが、「この機能、必要?」と首を捻りたくなるAIを搭載して、自動車の価格が上がっています。
しかも、AIとなると、故障したらメーカーのディーラーで高いお金を払わなければ修理・交換ができません。
すなわち、完全にメーカーの売上至上主義の「売り手都合」になってしまっています。しかし、製品を選び、使うのは「買い手」です。
そして、3Dテレビの失敗が物語るように、「買い手」が見る目は非常に厳しいものがあります。
本当に必要性、利便性を感じなければ、たとえAIが搭載されていても、消費者が購入に至ることはまずないでしょう。
そうした中で、IoTで消費者に寄り添おうと考えたら、機械の操作が苦手な高齢者に関わるモノから普及していくようにしか思えないのです。
若者なら、なんの問題もなく機械を使いこなします。
ましてや、それにスマホを絡めるようであれば、Apple社の調査では若者は1日に80回スマホを見ますので、「機械が自分で判断する」必要はありません。
しかし、繰り返しになりますが、そのような世界は「IoT」とは呼ばないと私は考えます。
やはり、機械自らが指示を出す。
それがモノの売買であれば、決済まで自動化される。
それがIoTという世界だと思いますが、現状を見ると、そうした世界が実現するまでには、まだ数年はかかりそうですね。
少なくとも、『マルチナ、永遠のAI。~AIと仮想通貨時代をどう生きるか』の舞台となっている2020年に、冷蔵庫が自分の判断で牛乳を注文し、それがドローンで運ばれて来て、受け取りをしたらウォレットから仮想通貨が自動的に引き落とされる。2020年は、そんな時代にはまだなっていないように思われます。