XC90は片側二車線の右側(走行車線)を走行。衝突でできたへこみは右ヘッドライト周辺に集中している。ボンネットのへこみは歩行者をはね上げたときにできたもので、前部の破損は自転車との衝突によるもの。

 夜間であることを考えると、事故そのものは、普通の自動車でも発生しうるものだ。

公開動画からわかる状況、時速60キロだと1秒間に18メートル

 事故後に警察が公開したXC90の車載カメラの映像を見ると、郊外の道路をほぼヘッドライトの明かりだけで走行しているような状況だ。センターラインの見え方からすると照射範囲は20~30メートルといったところだ。映像では、ヘッドライトの照射範囲に歩行者が入って衝突まで1秒ちょっと(1.4秒という報道もある)。

 新聞報道では、「タイミング的に人間でも自動運転でも避けられなかったのではないか?」という警察官のコメントもある。確かに歩行者を認識してから1秒では、ブレーキに足を乗せ替えるのが精いっぱいかもしれない。実験車両はロービーム走行と見られ、動画で確認してもヘッドライトの照射範囲は1、2秒の範囲だった。ちなみに時速60キロの場合、クルマは1秒間におよそ18メートル進む。

搭載センサーは100メートル先の把握が可能

 自動運転カーは本当に事故を避けられなかったのだろうか。多くの報道やコメントでは、車載映像のみを見て「歩行者は直前まで認識できない」としているが、実験車両はルーフにセンサーとして「LiDAR(ライダー)」を装備している。LiDARは通常赤外線を利用するので、夜間でも物体の認識はできるはずだ。Uberにセンサーを提供しているベロダインによれば実験車両のセンサーは、200メートル先の障害物を認識できるとしている。平均的なLiDARの測定範囲は100メートル前後だが、ベロダインは150メートル以上のLiDARを研究している。仮に100メートル先までスキャンできると仮定しても、人間の目で見えない状況においてもレーザースキャナーは、道路上を横切る物体をもっと前から識別できてもおかしくない。

 今回、ブレーキをかけた形跡がないので、システムになんらかの不具合や設計ミス、バグの類があったと思われる。ECUの反応速度なら1秒あれば十分にブレーキ操作まで可能だ。自動車ECUのリアルタイム性の保証は一般的に1ミリ秒程度。プロセッサやOSがリアルタイムであるというのは、保証した時間単位であり、どのようなタスクも1ミリ秒待てば必ず実行されるということだ。カメラやセンサーが歩行者を認識していれば、数ミリ秒後にはブレーキに指令が送られ、減速が始まる。

 そうなると、自動運転システムに何らかのエラーや不具合があったはずと考えられる。そしてエラーの可能性があるコンポーネントは大きく4つある。「LiDARそのものの不調」、「LiDARの信号を認識するAI(障害物検知、通路検知)の不備」、「センサー情報を判断して自動運転処理を行うECUプログラム」、「ECUの指令を受けハンドルやブレーキを動かすECUやアクチュエーターなどのトラブル」だ。