定年退職後に最適なお金の引き出し方

 第72回では「定年退職後の世界」と題して、老後(特に65歳以上)の就労環境が現時点では整っていないこと、それでも働いて収入を得ることによって、リスクをとった積極的な運用ができるようになり、結果として金融資産がしっかりと増え、「人生100年時代」の今、問題となっている長生きリスクにも対処できる可能性が高くなることを書きました。

「老後もしっかりと資産を増やすことを考えなければいけない」とのメッセージはもちろん大事なのですが、一方で、定年退職後は蓄えた資産を生活のために取り崩す局面にあるのも事実です。しかしながら、定年退職後にどのようにお金を取り崩していくべきなのかについてのアドバイスは驚くほど少ないのが現状です。

 このような中、金融庁が2017年11月に、「退職世代等に対する金融サービスのあり方」を検討する方針を打ち出しました。ここでは、退職世代の金融資産の運用および取り崩し方法について、金融業が何をできるのかを検討する、と謳われており、2018年の主要テーマになると思います。そこで今回は、老後の金融資産の取り崩し方法についてお話しいたします。

定番の議論:定額引き出しか定率引き出しか

 これまで取り崩しがテーマになると、積み立てた運用資産から定額で引き出すのがよいのか、もしくは直前の残高の一定割合を引き出す定率引き出しがよいのか、議論されることが多かったようです。資産を積立投資で形成する局面は、定額積立が有利との話はこの連載でもしたと思います。これは、いわゆる「ドル・コスト平均法」と呼ばれる手法で、毎月定額で投資すると、投資対象が安いときにはたくさん購入でき、高いときには少ししか購入しないという購買行動を取ることができます。結果として平均購入単価が低くなり、利益が出やすい体質になるという仕組みです。